中国の習近平国家主席と台湾の馬英九総統が、シンガポールで会談した。中台の首脳会談は1949年の分断後初めてという歴史的なものであり、その意義は大きい。

 中台は双方が唯一の合法政府であると主張し、互いの主権を認めていないため、会談は国家主席や総統の肩書は使わず、「両岸の指導者」の身分で行った。

 この点一つを取っても、中台関係が、いかに微妙かが分かる。それだけに、トップ同士が直接顔を合わせて会談したことは、信頼醸成の面からも高く評価されるべきだ。

 中台関係の安定は、東アジアの政治、経済の発展にも寄与する。わが国も、今後の行方を注視する必要がある。

 会談で両首脳は、台湾は中国と不可分の領土であるとする「一つの中国」の原則の下で、その解釈は各自に委ねるとした「92年合意」を堅持していくことを再確認した。

 両首脳が、中国共産党と与党国民党が中台交流の基礎としてきた「一つの中国」を再確認したのは、「合意は存在しない」とする台湾独立志向の野党、民主進歩党(民進党)へのけん制と言える。

 習氏は「私は両岸双方が共に努力し、『92年合意』を堅持し、共同の政治的基礎を強化して、両岸関係が正しい方向に発展し続けることを希望する」と強調。「台湾独立は両岸の平和と発展を損なうもので、両岸同胞は団結して共に反対しなければならない」と厳しく独立派を非難した。

 来年1月に迫った台湾総統選挙は民進党の蔡英文主席がリードし、8年ぶりの政権交代が現実味を増している。

 蔡氏は米国に続き10月に日本を訪問し、対日関係重視と”脱中国“の動きを見せた。安倍晋三首相も台湾重視の姿勢であり、蔡氏が政権の座に就けば、中国の台湾への影響力が低下するのは必至だ。

 習氏は総統選を厳しく見据え、台湾統一に向けて取り組む姿勢をアピールしたと言える。習氏は「両岸の中国人には、自分の問題を解決する能力と知恵がある」と述べ、米国の関与もけん制した。

 一方、馬氏も「両岸関係は既に49年以来、最も平和で安定した段階にある」と表明。「『92年合意』を揺るぎないものにし、両岸の対立を交流に変える」と述べた。

 馬政権は、交流の拡大など中国寄りの姿勢が強いとの批判を受け、苦戦する国民党は10月に候補者を差し替えた。

 来年5月に任期が満了する馬氏が総統選での国民党の後押しと歴史的会談の功績を狙ったのは明らかである。

 両首脳が、台湾海峡の平和と発展の重要性を確認したのも中台で問題を解決しようとする未来志向の現れだろう。

 とはいえ、台湾では現状維持を望む声が多く、台湾の将来に関する議論が中国主導で進むことへの懸念も根強い。

 中台がどんな国の在り方を選択するにせよ、歴史的会談は大きな財産だ。未来を開く礎にしてもらいたい。