三菱航空機(愛知県)が開発を進めてきた国産初のジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)が、初飛行に成功した。

 「飛行機が飛びたいと言っているような感じで、ふわっと機体が浮き上がった」。機長を務めた三菱航空機のチーフテストパイロットの安村佳之さん(徳島県出身)の感想が、プロペラ機の「YS11」以来、半世紀ぶりの国産旅客機への思いを物語る。記念すべき大空への第一歩を、共に喜びたい。

 MRJが、日本の航空機産業飛躍の起爆剤になるよう期待する。

 愛知県営名古屋空港を離陸したMRJは、試験空域で大きめの旋回や上昇・下降などを繰り返し、約1時間半の飛行を無事終えた。安村さんは「今まで操縦した機体でトップクラスの安定性だ」と強調し、森本浩通社長は「大成功に近い」と評価した。

 MRJは設計の見直しなどで開発スケジュールが5回延期されたが、安全を重視した生みの苦しみだと捉えたい。

 開発費の一部を国費で賄うなど官民が連携して最先端の技術を結集したMRJは、スリムな機体に最新鋭の米国社製エンジンを搭載。低燃費と低騒音の性能が売り物だ。機体の一部に軽くて丈夫な炭素繊維複合材を採用している。

 三菱航空機は既にANAホールディングスや日本航空など国内外から400機余りを受注。今後20年間で5千機の小型機の新規需要があるとみており、MRJで半分のシェア獲得を目指す。

 そのためには、幾つものハードルを越えなければならない。まず、国の安全審査だ。日米で計2500時間の試験飛行が必要となるが、改善を要する点も出てくるだろう。

 市場競争も厳しい。小型ジェット旅客機はエンブラエル(ブラジル)とボンバルディア(カナダ)で、市場の8割超を占める。中国国有企業も90席の小型機を開発し、近く中国の航空会社に引き渡す。

 MRJが激しい受注競争で勝つためには、コストダウンや種類の拡充が欠かせない。

 三菱航空機は、開発中の70~90席クラスに加え、100席クラスの開発も検討する。

 各国の航空会社の実情に応じた売り込み戦略も重要である。新興国では、航空会社が機体を調達するためのリースや融資の仕組みも提案しなければならない。欧州は、販売後のアフターケアなどサービス面での実積を重視しているため、これに応える態勢づくりが求められる。

 残念ながら、YS11で国産旅客機の製造が途切れたこともあり、日本の航空機産業は欧米の下請けとなっている。

 それだけに、MRJ誕生のインパクトは大きい。約100万点もの部品から成り、関係する企業の裾野も広い。中小企業にとっては新たなビジネスチャンスが到来する。

 オールジャパンの支援態勢で販路を開拓し、航空機産業を次の基幹産業に育てたい。