パリ中心部で起きた同時多発テロは、過激派組織「イスラム国」による周到に準備された組織的犯行であることが分かってきた。

 罪もない人々を無差別に殺害するテロは、いかなる理由があっても決して許されるものではない。卑劣極まりない犯行を厳しく非難する。

 襲撃の様子は明らかになってきたが、どのように計画されたのかなど詳しい状況はまだ不明だ。捜査当局は全容の解明を急いでもらいたい。

 実行犯は3班に分かれ、レストランやサッカー場、コンサート会場などで、銃撃や自爆で殺傷を繰り返した。容赦なく市民を狙い撃ちした残忍さに、戦慄を覚える。

 パリでは今年1月、風刺週刊紙の本社が襲われるテロがあった。当局はその後、厳重な警戒に入ったが、6月にフランス南東部リヨン郊外のガス工場が襲撃されるなど、事件が続発している。

 今月末からは、パリで国連気候変動枠組み条約の第21回締約国会議(COP21)があり、さらに警戒を強めていたものの、襲撃を許してしまった。テロを防ぐ難しさをあらためて痛感させられる。

 大勢の人が集まる一般施設の警備は、重要施設より難しいとされる。過剰になれば自由な往来が妨げられ、市民生活が制限されるためだ。今回のテロは、そうした自由な社会への攻撃ともいえよう。

 「イスラム国」は犯行を認める声明で、フランスがシリアなどで行う空爆に対する報復だとしている。

 内戦が続くシリアでは、アサド政権を認めない米国主導の有志連合が反体制派支援のため、イスラム過激派への空爆を行っている。一方、9月末にはアサド政権に近いロシアも空爆を始めたが、反体制派も攻撃対象としている。

 大国の思惑が絡み、足並みがそろわないことが、シリア情勢を一層複雑にし、混迷を深めている要因である。

 トルコで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合は、過激派組織に流入する外国人やテロ資金の遮断に向けた措置を強めることで一致した。

 シリアなど中東が混乱したままでは、テロの脅威は続こう。事態の収束へ、各国は対立を乗り越え、結束して取り組まなければならない。

 懸念されるのは、テロとは何の関係もないイスラム教徒への偏見や排斥が、各国で広がることだ。

 人々が寛容さを失い、憎悪が憎悪を生む社会になれば、テロを起こす側の思うつぼである。そうならないよう、冷静な対応が求められる。

 過激思想に染まり、過激派組織に加わる若者の多くは、社会への怒りや疎外感を抱いているといわれる。差別や貧困がテロの温床になっていることを、私たちは真剣に考える必要がある。

 日本もテロの攻撃から無縁ではない。備えを万全にするのはもちろん、貧困の撲滅など途上国への人道支援に一層、力を入れていきたい。