自民党は、環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意を受けて、農林水産分野の国内対策を正式に決定した。

 大筋合意では、政府が「聖域」と位置付けていたコメなど農業の重要5項目も、全品目のうち約3割で関税が撤廃されることになった。

 生産者が不安と怒りを募らせるのは無理もない。政府、与党の保護、強化策の在り方が問われる。

 「農政新時代 努力が報われる農林水産業の実現に向けて」と題した対策は、経営安定と体質強化の2本柱から成る。農林水産物の輸出推進や若手農家の育成なども盛り込んだ。

 市場開放を機に、長年、関税で保護されてきた農業の構造転換を図る。経営規模を拡大して、輸出も狙う成長産業に育成しようというものだ。大切なのは、いかに実効性のある対策にするかである。

 日本はTPPで、米国とオーストラリア向けにコメの無関税輸入枠を設定する。

 経営安定対策では、コメの輸入増による国産米の需給や価格への影響を遮断するため、備蓄米の保管期間を原則5年から3年程度に短縮し、国別枠の輸入量に相当する国産米を政府が買い入れる。

 牛・豚肉の畜産農家には、交付金制度を拡充し、赤字の補填(ほてん)割合を現在の8割から9割に拡大。豚は国の負担割合を4分の3に上げる。

 いずれも、安価な輸入品の攻勢を受ける国内産品の一時的な保護には有効だろう。だが、抜本的な対策には程遠いと言わざるを得ない。

 体質強化策では、意欲のある農家の機械導入、無利子の金融支援などを推進する。

 さらに、畑作、野菜、果樹などが対象の「産地パワーアップ事業」を創設。地域の営農戦略に基づき、高性能機械の導入や改植による高収益作物への転換を推進する。

 地域の畜産・酪農業者や飼料生産業者らが連携して生産効率を高める「畜産クラスター事業」も拡充する。

 林業の競争力強化策では、合板・製材の生産コストを低減。大規模・高効率の加工施設の整備を推進する。

 しかし、いずれも新味に乏しく物足りなさが拭えない。

 実施期間や予算規模も示されなかった。1990年代のコメ市場開放に伴う約6兆円のウルグアイ・ラウンド対策事業費が、ばらまきと批判されたのを踏まえたためだ。

 当時、効果の不透明な公共事業が多く盛り込まれていたことは反省材料である。

 自民党の小泉進次郎農林部会長は「日本農業に(TPPによる)マイナスの影響を起こさせない」と語った。

 言うのはたやすいが、実現への道が厳しいことを、農林水産業者はよく知っている。

 政府は工業など他分野も含た対策大綱を近く策定する。来夏の参院選を意識したばらまきになれば大局を見失い、効果が損なわれる。政府、与党はそのことを肝に銘じるべきだ。