建築の信頼を裏切る不正が、徳島県内の重要施設で行われていたことが分かった。

 くい打ち工事でデータの改ざんが判明した業界大手のジャパンパイルが、徳島市内の県立中央病院の改築工事に携わり、くい22本でデータを流用していた。

 県は建物の安全性に問題はないと説明している。だが、計254本のくいのうち、1割近くで流用があったというから、そのずさんさに怒りを禁じ得ない。

 入院患者らから、不安の声が上がったのは当然だろう。

 県内の建物で他にデータの流用はないのか。関係各社は徹底した調査を行い、安全の確保と不安の払拭(ふっしょく)に努めなければならない。

 中央病院は2012年9月、旧病院の敷地内に完成し、同年10月に開院した。

 県内の中核病院として、救命救急などの医療体制を充実させたほか、南海トラフ巨大地震に備えて免震構造としたのが特徴だ。屋上にヘリポートと運航管理室を備え、ドクターヘリの基地病院ともなっている。

 日常的に多くの患者が訪れ、災害時には被災者の命の綱となる施設である。

 それだけに、工事には万全の注意が求められたはずだ。データ流用などあってはならない。なのに、なぜ行われたのか。

 県によると、くい打ち工事は10年3月から5月にかけて実施された。くい打ち機械3台で掘削した際、それぞれの責任者3人が、電流値を記録する装置のスイッチを入れ忘れるなどし、データが適正に取れなかったという。このため、正しい記録が取れた分のデータを使ったようだ。

 強固な地盤「支持層」までの深さがどの場所もほぼ同じで、使ったくいの長さなどから、県は全てが支持層に到達していると判断した。

 しかし、スイッチの入れ忘れといった単純ミスが、なぜこれほど多くあったのか。専門業者であり、にわかに信じがたいことだ。

 今まで流用が分からなかったことも問題である。

 先月、横浜市のマンション傾斜で旭化成建材のデータ改ざんが発覚した際、施工主側の工事監理者が常に現場でチェックするケースは少ないことが明らかになった。

 自治体や民間検査機関が行う検査も、施工時の写真などでの事後確認にとどまっていることも分かった。工期を優先するあまり、データが取れなかった場合に流用が行われていた実態も浮かんでいる。

 チェック体制の強化を急がなければならない。

 何より改める必要があるのは業界の体質である。社員教育の在り方を見直すとともに、企業倫理を自ら厳しく問い直すよう求めたい。

 業界団体はきのう、全国での点検状況を発表したが、不正の有無は明らかにしなかった。全容が解明されない限り、信頼を取り戻せないことを肝に銘じるべきである。