環太平洋連携協定(TPP)の発効に備えた総合的な対策大綱を政府が決定した。

 TPPを成長戦略の切り札と位置付け、農産品を含めた輸出拡大や投資促進の施策を盛り込んでいる。

 関税の削減・撤廃やルールの透明化で自由な貿易を推進するTPPを、日本経済の起爆剤にしようとの方向性に異論はない。

 問題は、国内産業が受けるマイナスをいかに小さく抑え、強みを伸ばして、メリットをどれだけ引き出せるかである。政府の実行力が問われよう。

 最も打撃を被る恐れが強いのは、安い海外産品の輸入にさらされる農林水産業だ。

 これについて大綱は、自民党が先にまとめた対策に沿って、保護策である「経営安定化」と、攻めの農林水産業に転換する「体質強化」の2本柱を掲げた。

 経営安定化には、政府備蓄米の買い入れ量を増やす米価格下支え策や、牛・豚肉生産者に対する赤字補填(ほてん)割合の引き上げなどを盛り込んだ。

 体質強化では、農林水産物の輸出額を2020年に1兆円に増やす目標を前倒しし、経営感覚に優れた農業者育成のため金融支援を拡充するなどとした。

 農産物の市場開放が進むことに、農家の多くが不安を募らせている。十分な手当てが必要なのは言うまでもない。

 しかし、対策は目新しさに欠け、競争力強化への道筋が見えず、踏み込み不足だと言わざるを得ない。

 自民党内からは、来夏の参院選をにらみ、農業土木などの予算増額を求める声が上がっているという。

 1993年に合意した関税貿易一般協定(ガット)ウルグアイ・ラウンドの対策事業が、6兆円以上を費やしながら農業強化につながらなかった反省を忘れてはならない。

 大綱は、これまで海外展開に二の足を踏んでいた中堅・中小企業の支援も打ち出し、対象企業の60%以上を市場開拓や事業拡大の成功に導く目標を設定した。

 地方の中小企業を応援する姿勢は歓迎できる。だが、その内容は、国や地方自治体、商工会議所などが中小企業の海外展開を総合的に支援する仕組みを構築するといったものだ。

 「新輸出大国」を目指すというスローガンも掲げたが、厳しい経営環境に置かれている中小企業を後押しするには、力強さに欠けるといえよう。企業が意欲を高め、一歩前に踏み出せるよう、より具体的な施策を打ち出してもらいたい。

 政府は、TPP発効の影響を示した詳しい試算を来月下旬にまとめる見通しである。それを踏まえてさらに煮詰め、実効のある対策にすることが重要だ。

 その際、注意すべきなのは、旧来型のばらまきに陥らないようにすることだ。大綱を絵に描いた餅にしてはならない。