国産ロケットの国際的な打ち上げ市場への参入に、弾みがついた。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が、カナダの通信会社の衛星を載せた改良型H2Aロケット29号機の打ち上げに成功した。

 日本のロケットで初の商業衛星の軌道投入を、世界からの受注拡大につなげたい。

 H2Aロケットの2段目は4時間半飛行して、衛星を分離した。

 衛星は、テレサット社の通信放送衛星で重さ約5トン。大西洋上空の高度3万6千キロの静止軌道で、欧州やアフリカ、南米などをカバーする。

 民間からの受注を獲得するためには、ロケットのたゆまない改良が不可欠である。

 緯度の高い種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げられるH2Aは、赤道直下で打ち上げられる欧州の「アリアン5」などに比べて、受注面で不利だった。静止衛星を打ち上げる際、分離した後で衛星が軌道に入るまでの燃料が多く必要なためだ。

 このため、29号機では、打ち上げ後すぐに衛星を分離せず、ロケットの2段目エンジンを3回噴射して、静止軌道により近い位置で分離した。この方式で、衛星の搭載燃料を節約した。

 ロシアで打ち上げ失敗が相次ぐ状況で、H2Aは23回連続して打ち上げに成功し、成功率は97%に高まった。安定性も大きな強みとなろう。

 しかし、受注拡大は容易ではない。世界の商業衛星打ち上げビジネスは、先行する欧州宇宙大手アリアンスペースを、新興勢力の米民間宇宙企業スペースX社が低価格を武器に激しく追いかけている。

 三菱重工が欧米企業に対抗して受注を獲得するためには、コスト競争力を高めることが不可欠である。29号機の打ち上げ費用は100億円以上だが、スペースX社の「ファルコン9」は80億円を下回っている。

 H2Aの後継として日本が2020年度の打ち上げを目指して開発中の「H3」は約50億円に半減させる予定だ。

 だが、アリアンスペースも20年に打ち上げを計画する「アリアン6」で、製造コストの半減を目指している。

 各社は最新技術を駆使した価格競争を迫られよう。

 このところ、商業衛星の打ち上げは年間20~30機で推移しており、欧米の競合他社は年間6~10機のロケットを安定して打ち上げている。

 三菱重工はこれまで、日本や韓国など政府系機関からの受注が主体で14年、15年は、採算ぎりぎりの年間4機の打ち上げを確保した。だが、10年から13年は2~3機と採算割れの状況だった。

 打ち上げビジネスが軌道に乗れば、部品など関連産業へのかなりの波及効果が見込める。JAXAの奥村直樹理事長は「衛星打ち上げ市場への参入加速をJAXAとして応援したい」と強調した。

 官民の一体的取り組みを強めることが重要だ。