政府が、「共謀罪」の名称を「テロ等組織犯罪準備罪」に改めて創設し、構成要件も変えた組織犯罪処罰法の改正案について、26日召集の臨時国会への提出を見送った。

 会期が限られている中で、与党内の「慎重審議」を求める声などを考慮したようだ。

 共謀罪は、殺人など重大な犯罪の実行行為がなくても、謀議に加わるだけで、処罰される。対象犯罪も広範囲に及ぶため、「市民団体や労働組合も対象になり得る」との批判が強い。国会で過去3回も廃案になっている。

 名称を変えても、根幹は同じだ。提出を見送ったのは当然である。

 もとより、乱用や恣意的な運用が懸念される法案には賛成できない。

 今回の改正案は、捜査当局の拡大解釈と乱用を危惧する意見を踏まえ、対象を「組織的犯罪集団」に限定した。罪の成立には計画だけでなく「準備が必要」との要件を加える方向だ。

 処罰対象として▽暴力団組員が対立する組長を拳銃で射殺することを計画し、その購入資金を用意した▽テロ組織メンバーがテロ実行計画に基づき化学物質を調達した-などの場合が想定されている。

 懲役・禁錮4年以上の刑を科すことができる重要犯罪が対象で、窃盗や詐欺など600を超える。

 これで、恣意的な運用の恐れがなくなるものだろうか。

 日弁連の中本和洋会長は声明で「組織的犯罪集団を明確に定義することは困難だ」と指摘し、法案の国会提出に反対している。

 改正案は、組織的テロの防止を目的とする「国際組織犯罪防止条約」の締結に向けた国内法整備の一環である。

 2020年東京五輪を控えて、テロ対策がますます重要になることは分かる。だが、専門家からは、既存の法律で対処できるとの指摘もある。

 政府は来年の通常国会への提出を目指す構えだが、法案の必要性に、国民の十分な理解が得られるかは疑問だ。

 犯罪には、共謀(計画)-予備-未遂-既遂の4段階がある。日本の刑法では、犯罪の実行を罰するのが原則だ。予備罪が設けられているのは殺人など一部に限られる。

 政府が「テロ等組織犯罪準備罪」を創設する理由は、対象となる犯罪の幅の広さから考えても、一概にテロ対策のためだけとは言い切れまい。

 改正案が来年の通常国会で成立すれば、捜査当局は、犯罪の摘発に大きな手段を得ることになる。5月には、刑事司法改革関連法が成立し、捜査で電話やメールを傍受できる対象犯罪は大幅に増えた。

 大分県では、県警の別府署員が、野党の支援団体が入る建物の敷地に、無断で隠しカメラを設置する事件が起きたばかりだ。

 市民運動や団体の活動が日ごろから当局に監視され、いつ、新しい罪に問われるか分からない。そんな息苦しい国にしてはならない。