「チェンジ(変革)」を掲げ、大きな期待を担って登場したオバマ米大統領が、最後の国民向け演説を地元のシカゴで行った。

 2期8年の任期を締めくくる演説で、オバマ氏は「民主主義の維持には、相違を超えて結束することが重要だ」と訴えた。「私をより優れた大統領にしてくれた」として国民に謝意を表明した。

 演説には、民主主義や自由など米国の「中核的な価値や理想」を重視してきたオバマ氏らしさがにじんだ。

 問題は、次期大統領となるトランプ氏が、そうした価値や理想を共有することができるかどうかだ。

 オバマ後の世界を見通すのは容易ではないが、オバマ氏が訴えてきた寛容の精神と多様性の大切さは、しっかりと引き継いでいかなければならない。

 大統領選後、トランプ氏に対して表立った批判を回避してきたオバマ氏は、米国の結束を訴えた。移民の子どもたちを大切にしなければ「われわれの子どもたちの未来も損なうことになる」と述べたのは、トランプ氏の姿勢を強くけん制したものだ。

 トランプ氏が閣僚・側近人事で排外的な言動が目立つ強硬派を起用する中、米国の分断が深まることへの懸念を示したといえよう。

 トランプ氏は、オバマ氏の訴えを十分に受け止めなければならない。排外的な動きは、新たなテロを誘発しかねない。怒りの矛先が移民・難民やイスラム教に向かい、偏見や差別が高じれば、それがまたテロを生むことにもなるからだ。

 演説でオバマ氏は、環境問題にも触れ、「気候変動問題を否定することは、次世代への裏切りだ」と語った。これも地球温暖化対策を軽視しているトランプ氏への警鐘といえる。

 過激派組織「イスラム国」(IS)などによるテロの脅威ばかりではなく、難民問題や貧困と、世界は数々の深刻な問題に直面している。

 超大国とはいえ、単独行動では立ち行かない。オバマ氏が外交・安全保障政策の基本として国際的な協調を重視してきた姿勢は評価できる。

 トランプ氏に求められるのは、排除や排外主義ではなく、連携や協調だろう。

 オバマ氏の支持率は50%超と、今なお人気は根強い。今回の演説でも大不況から経済再生を果たしたと強調した。

 しかし、その実績を巡っては、多くが「チェンジ」などの公約を実現できなかったと考え、そのレガシー(政治的遺産)に対しては国民の見方が分かれている。

 トランプ氏は、医療保険制度改革(オバマケア)など、オバマ政権の看板政策を覆す姿勢を鮮明にしており、予断を許さない。

 「変革」から「米国第一」の時代へ。オバマ氏が最後の演説で訴えた民主主義などの価値観は、堅持されていくのだろうか。