地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」の前途に暗雲が漂い始めた。トランプ米大統領が、世界の潮流と逆行する政策を掲げ、協定から離脱する構えを見せているからだ。

 離脱手続きには4年かかるが、世界第2位の温室効果ガス排出国が対策を怠れば、協定の実効性が大きく損なわれる。

 温暖化は人類共通の深刻な問題だ。トランプ氏が姿勢を改めるよう、日本など各国が強力に働き掛ける必要がある。

 トランプ政権は、大統領の就任初日に発表した基本政策の中で、オバマ前政権が定めた温暖化対策の行動計画を撤廃する方針を明らかにした。計画は、火力発電所に二酸化炭素の排出規制を課すなど、米国の取り組みを国内外に示したものだ。

 トランプ政権は、これを「有害で不必要な規制」と断じ、撤廃により、今後7年で労働者の賃金を約3兆4400億円以上増やすとした。石炭業界を復活させ、シェールガスと併せて、化石燃料への依存度を高めるエネルギー政策も打ち出した。

 大統領選で石油・石炭業界の支援を受けたとはいえ、あまりに露骨である。地球規模の被害防止より、自国の短期的な利益を優先する姿勢は、超大国の指導者としての資質を疑わせる。

 懸念されるのは、米国の後退が各国の行動を鈍らせかねないことだ。そうなれば、取り返しのつかない事態となる。

 パリ協定は、世界が長い時間をかけて作り上げた枠組みである。1人の為政者に台無しにされてはいけない。