「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を巡り、与野党の攻防が激しくなってきた。

 衆院法務委員会で採決を強行する構えの自民、公明両党に対して、阻止を狙う民進、共産、自由、社民の4野党が金田勝年法相の不信任決議案を衆院に提出した。

 与党はきょう、本会議で不信任案を否決し、あすの法務委で法案を採決する方針だ。だが法案には、一般の市民が捜査対象になるのではないかなど、多くの疑問がある。

 国民の理解が得られないままの採決強行は許されない。衆院は言論の府として、審議を尽くさなければならない。

 不信任案は、金田氏が法案の「基本的事項さえ答弁できず、閣僚としてあるまじき醜態をさらし続けている」と批判し、「法相の任にあたわないことは明白だ」とした。

 金田氏は法務委の質疑でしどろもどろの答弁を繰り返し、立ち往生する場面が多かった。そのためか、与党は先月、大臣に代わって答弁できる政府参考人として、法務省刑事局長の出席を賛成多数で認めた。

 官僚の出席は全会一致で決めるのが慣例である。それを破ってまで押し通すとは、政府、与党も金田氏の能力を疑っている証しと言えよう。野党が「法相隠し」と反発したのは当然である。

 金田氏は法案が国会に提出される前の2月に、「提出後に議論を重ねていくべきだ」という内容の文書を報道機関向けに出し、「質問封じ」だと非難された経緯もある。

 「職責をしっかり果たしていく」と金田氏は言うが、法相の資質に欠けるのは明らかだ。不信任案を突き付けられたのは仕方なかろう。

 担当大臣が十分に説明できない法案とは、一体どんなものなのか。

 法案は適用対象を組織的犯罪集団に限定し、犯罪を実行しなくても、「計画」や現場の下見などの「準備行為」があれば処罰できるとした。

 しかし、組織的犯罪集団の定義や犯罪の構成要件は明確ではなく、当局が恣意(しい)的に判断できる余地がある。

 正当な活動が拡大解釈で罪に問われるようになれば、社会が萎縮し、政府や自治体に対して声を上げにくくなる。市民団体などの不安は払拭(ふっしょく)されていない。

 政府は東京五輪・パラリンピックに向けたテロ対策を前面に出しているが、締結を目指す国際組織犯罪防止条約は元々、マネーロンダリング(資金洗浄)などの資金対策が目的である。

 過去3回も廃案になった評判の悪い共謀罪法案を通すため、国民が反対しにくい「対テロ」に看板を付け替えたのではないか。

 何より怖いのは、法案が監視社会を招き、民主主義の基盤である言論・表現の自由が侵されることだ。審議を通じて懸念が拭えないなら、衆院は廃案にすべきである。