政府の国家戦略特区制度を活用した学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設計画を巡り、衆参両院の委員会がそれぞれ閉会中審査を開いた。
 
 最大の焦点は、首相官邸の働き掛けがあったのかどうかである。だが、予想通り真偽は分からなかった。
 
 安倍晋三首相が外遊中で出席せず、鍵を握る首相補佐官らも呼ばないのでは、疑問は到底解消されまい。
 
 ここはやはり、じっくりと審査できる臨時国会を召集すべきだ。併せて、偽証すれば罪に問われる証人喚問で関係者らに話してもらう必要がある。政府、与党は早急に対応しなければならない。
 
 委員会で注目されたのは、問題の表面化以来、初めて参考人として国会に出てきた前川喜平・前文部科学事務次官の証言である。
 
 前川氏は「背景に官邸の動きがあった」と強調した。
 
 根拠に挙げたのが、昨年8月に学園理事で当時内閣官房参与だった木曽功氏から新設の話を「早く進めてほしい」と促され、9、10月には和泉洋人首相補佐官からも同様の要請を受けたことだ。
 
 その中で、和泉氏は「総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」と話したという。
 
 これに対して、木曽、和泉の両氏とも発言を否定しているが、委員会にその姿はなかった。国会で説明を尽くす責任がある。
 
 前川氏は、文科省の調査で確認されなかった文書「10/7萩生田副長官ご発言概要」が存在したとも明言した。
 
 国家戦略特区の諮問会議が獣医学部新設の方針を決めたのは、昨年11月9日だ。それなのに、文書には加計学園の予定地・愛媛県今治市を前提としたような表現があった。
 
 萩生田光一官房副長官は、発言の「記憶はない」とし、計画への関与も否定した。
 
 萩生田氏と前川氏の説明には食い違う点が多い。どちらが正しいのか。前川氏は証人喚問を受ける構えだ。萩生田氏も応じるべきである。
 
 政府が2015年に示した獣医学部新設の4条件に、加計学園の計画が合致しているかも焦点の一つだった。
 
 これについて、前川氏が「十分な議論がされていない」と批判したのに対し、山本幸三地方創生担当相は「(条件を満たすと)私が確認した」と胸を張った。
 
 石破茂担当相の主導で4条件が設けられた当時、農林水産省は「現状で対応できている」とし、獣医師を増やす環境にはないとの認識だった。
 
 新設に向けて動きだしたのは、昨年8月に担当相が山本氏に代わってからだ。その後、一体どんな環境変化があったのか。
 
 前川氏は、加計学園だけに当てはまるような条件が加わったことなども挙げ、「行政がゆがめられた」と語った。
 
 このままでは国民の納得は得られまい。1日だけで審査を終わらせれば、不信感は募るばかりだ。