日本と欧州連合(EU)が経済連携協定(EPA)で大枠合意した。

 関税を撤廃して、規制を緩和することで、貿易などを活発にする協定だ。2019年の早い段階での発効を目指すとしており、世界の国内総生産(GDP)の約3割を占める巨大な経済圏が誕生することになる。

 EPAをてこに、世界経済の安定的な成長を支える役割を果たさなければならない。

 EPAには、日本とEUの経済を押し上げていくだけでなく、自由貿易を拡大させる波及効果も期待できる。その意義は大きい。

 米国第一を掲げるトランプ政権の発足や英国のEU離脱など、世界的な保護主義の動きが、日本経済に与える悪影響も心配されている。

 難航した交渉を、日欧が反保護主義の下で結束し、政治的に決着させた。日本の経済界には、米国の脱退を受けて11カ国で進める環太平洋連携協定(TPP)が実現する弾みになるとの声もある。

 EUの総人口は約5億人と日本の約4倍に上る。政府は海外需要を取り込む上で重要な地域と位置付けてきた。

 EPAでは、日本が農林水産物の一部で市場開放に応じる一方、EUは日本車の関税を発効後7年かけて引き下げ、8年目に撤廃する。

 懸念されるのは、人口減や高齢化、後継者不足などに悩む農畜産業者が、痛手を負いかねないことだ。

 欧州産の農産品が大量に入ってくれば、生産・加工業者が厳しい競争にさらされることを忘れてはならない。

 今回の交渉では、チーズ市場の開放を巡って、激しいせめぎ合いとなった。

 本場の欧州は、高品質なチーズを安価に生産できるため競争力が高い。ブランド力のある品目も多く、欧州産が日本市場を席巻し、国産の需要が減れば、生乳価格の下落は避けられない。酪農家にとっては大打撃で、厳しい経営を強いられよう。

 豚肉にしても、知名度が高いスペインのイベリコ豚などに対し、国内産地の警戒感は強い。製材では、フィンランドなど欧州が主要な輸入先となっており、さらに増える可能性がある。

 農業関係者の間には、交渉が急進展した背景に、安倍政権が内政の失点を経済外交で挽回しようとして、成果づくりを急いだとの見方もある。

 徳島県も情報収集に努め、県内への影響の調査・分析を進める。

 国が掲げる「攻めの農業」の真価が問われる局面を迎える。地方と連携して、農業者の不安にしっかりと対応していくことが大切だ。

 農業分野の市場開放によって、国内生産者がどんな影響を受けるのか。政府は、よく見極めながら、支援策を講じていかなければならない。

 国際協調体制の亀裂が広がり、世界経済は混迷の度を深めている。国内産業の競争力強化を急ぐ必要がある。