何ともおぞましい事件である。東京都八王子市の女性(23)が行方不明になり、神奈川県座間市のアパートの部屋から9人分の切断遺体が見つかった。

 この部屋の住人で、死体遺棄容疑で警視庁に逮捕された27歳の男は、「遺体を証拠隠滅しようとした」と認め、「浴室で解体した」と供述している。

 女性とは、インターネットの自殺サイトで知り合ったとみられる。便利さの半面、ネット社会の底知れない怖さを見せつけられたようだ。

 動機は一体何なのか。男と9人とはどんな関わりがあったのか。警視庁は遺体の身元の確認を急ぐとともに、9人が死亡した時期や状況など、事件の全容解明に全力を挙げてもらいたい。

 警視庁によると、遺体は男性1人、女性8人とみられ、クーラーボックスなど七つの箱に頭部や、腕や脚と思われる骨が入っていた。遺体の損壊に使ったとみられるのこぎりも発見された。

 八王子市の女性は、ツイッターに「死にたいけど一人だと怖い」などと書き込んでおり、男とツイッターを通じてやりとりしていたことが判明している。

 男を知る住民からは「明るく、優しく、礼儀も正しかった。信じられない」との声が上がった。一方で、不気味に感じていたと言う人もいた。

 男が多数の切断遺体を処分せず、身近に置いていたのも不可解だ。他人には分からない、ゆがんだ内面がうかがえる。事件の背景を知るには、その究明も欠かせない。

 自殺サイトは、一緒に自殺する人を募ったり、自殺の手段を教えたりするネット上のページだ。サイトで知り合った人たちが集団自殺するケースがあるほか、サイトを悪用する例も多く、社会問題となって久しい。

 2005年には堺市の男が、中学生や大学生ら男女3人を「一緒に練炭自殺しよう」などと持ち掛けて誘い出し、殺害するという重大事件が発生した。

 逮捕された男も、殺人の目的で女性に近づいたのだろうか。そうだとすれば、自ら死を考えるほど深刻な状況に追い詰められた人の気持ちを利用した、あまりに卑劣な犯行である。

 減少傾向にあるとはいえ、自殺者数は16年で約2万2千人にも上る。自殺する人の割合は、他の先進国よりも高いのが現状だ。厚生労働省が16年に実施した調査では、成人男女の23・6%が自殺したいと本気で考えたことがあると答えている。

 自殺を防止するには、家族や友人、知人ら周囲の人たちがSOSに気付き、適切に対応することが大事だ。

 同時にネット社会の現実を直視し、野放し状態になっている自殺サイトの規制を検討する必要がある。言論、表現の自由との関係を慎重に考慮しながら、悲劇を防ぐ手だてを講じなければならない。