全国の学校が2016年度に把握したいじめは、32万件を超えた。国公私立小中高、特別支援学校を対象に、文部科学省が実施した調査で分かった。極めて憂慮すべき事態である。
 
 文科省は今回の調査から、これまで対象でなかった「けんかやふざけ合い」なども一方的であれば、いじめとして捉えるよう求めた。それもあって、各校で積極的ないじめの把握が進み、前年度より10万件の大幅増となった。徳島県は、548件増の1985件に上る。
 
 従来の調査で隠れていたものが出たといってもいいだろう。むしろ、いじめの実態をより反映しているといえるのではないか。
 
 調査では、把握した件数の増加だけではなく、いじめの中身が依然深刻であることも明らかになった。
 
 大津市の中2男子のいじめ自殺をきっかけに、13年に施行された「いじめ防止対策推進法」で規定する「重大事態」は400件を数え、増加傾向にある。
 
 自殺した児童生徒は244人で、うち10人(前年度9件)がいじめに遭っていた。一刻を争う事態があることを知っておくべきだろう。
 
 何の手だても講じず、取り返しの付かない悲劇を招いたケースが後を絶たない。
 
 文科省は、小さな芽の段階から積極的にいじめを把握し指導に生かしたいとしている。かつては学校現場で教員が問題を抱え込み、いじめを隠すような風潮があった。学校ぐるみで解決するという意識を共有し、防止につなげなければならない。
 
 いじめの低年齢化も気になる。小学校でのいじめは1・5倍に急増し、特に低、中学年の増加が著しい。「冷やかしやからかい」「軽くぶつかられた」などが増えて全体数を押し上げたとするが、外から軽微に見えるものであっても、被害者の苦しみを推し量る必要がある。
 
 今の子どもにとって身近なコミュニケーションツールである会員制交流サイト(SNS)などを使った中傷、嫌がらせも目立つ。面と向かっての悪口や無視といったいじめと並行して行われている可能性がある。「SNSの利用でいじめが学校だけではなく、帰宅後や休み中にも広がった」との専門家の分析を重く受け止めたい。
 
 そうした中、SNSをいじめ相談の窓口に活用しようとの動きが出てきた。大津市と長野県が、試験的に実施している無料通信アプリLINE(ライン)で相談を受ける取り組みだ。被害者らにとって電話をするよりもハードルが低いとみられる。セーフティーネットとしての役割を期待したい。
 
 いじめ問題は、学校に任せきりでは到底対処できるものではない。苦しんでいる子どもが周囲にいないか。家庭や地域、関係団体などが連携し、いじめを見逃さない体制を築くことが大切である。