脳死と判定された人からの臓器移植を可能にする臓器移植法が1997年10月に施行されて、20年が過ぎた。

 これまで全国で487例、徳島県内では3例の脳死判定があった。2010年の法改正で、本人の意思が不明でも家族の承諾で提供できるようになり、提供数は徐々に増えつつある。

 だが、臓器提供者(ドナー)が慢性的に不足している現状は変わらない。ドナーや家族の意思が生かされるよう、制度を改善するとともに、移植医療への関心を高めることが重要だ。

 日本臓器移植ネットワーク(JOT)によると、移植を待っている患者は国内に約1万4千人もいる。人口100万人当たりのドナー数は0・7人しかない。米国の28人、英国の20人に比べ、大きく後れを取っている。

 その理由の一つは、ドナーや家族の意思が生かされていない事例があることだ。

 日本学術会議移植・再生医療分科会によると、ドナーになりうる候補者が出ても、家族に臓器提供の選択肢が示されていないケースがみられる。ドナーや家族の貴重な善意を無にしてはならない。

 分科会は9月、ドナー候補者が出た場合、報告・登録を医療機関に義務付ける制度の新設を提言した。

 医療機関側には、入院時に意思を確認するなどして、患者の思いを的確にくみ取る体制の整備が求められよう。

 ドナーの家族に対する心理面のケアも欠かせない。家族にとっては、大切な人が脳死状態になった悲しみで気が動転している中で、臓器提供するかどうかの決断という精神的負担が重なる。

 脳死を死と認めることへのためらいもあろう。少しでも負担を軽減するため、ドナーや家族に寄り添い、提供を受ける患者との橋渡し役となるコーディネーターの拡充が不可欠である。

 脳死での臓器提供ができるのは、高度な医療を行える大学病院などに限られる。県内では徳島大病院と県立中央病院、徳島赤十字病院の3病院だ。他の医療機関では、ドナーや家族に提供の意思があっても臓器摘出はできない。臓器移植を担える医療機関を増やしてもらいたい。

 気に掛かるのは、国民の関心が高くないことだ。臓器移植に関する内閣府の13年調査によると、意思表示をしている人は12・6%にとどまった。家族や親しい人と臓器提供について話をしたことがない人も62・7%に上る。

 臓器提供をするかどうかは意思表示カードのほか、運転免許証や健康保険証にも記入欄が設けられている。そうしたことを周知し、啓発していくことが大切だ。

 もちろん、臓器移植は個人の死生観が深く関わる問題であり、臓器提供は強要されるものではない。それを前提に、社会全体で意思表示に関する理解を進めていくことが必要だろう。