一体、相撲道を、何と心得ているのだろうか。
 
 全ての力士に範を示す立場にある横綱が、暴力沙汰を起こすとは言語道断だ。
 
 大相撲の東横綱日馬富士関=伊勢ケ浜部屋=が秋巡業中の10月、平幕貴ノ岩関=貴乃花部屋=を殴打し、大けがを負わせるという事件が起きた。2人は共にモンゴル出身である。
 
 貴ノ岩関は「脳振とう、左前頭部裂傷、右外耳道炎、右中頭蓋底骨折、髄液漏の疑い」と診断され、一時入院した。九州場所は初日から休場している。
 
 日馬富士関は「大変迷惑を掛けたことを深くおわび申し上げます」と、型通りの謝罪の言葉を口にしたが、それで済むものではない。
 
 関係者によると、鳥取県で開かれたモンゴル出身力士らの酒席で、日馬富士関が感情のもつれなどから、ビール瓶で貴ノ岩関の頭を殴打した。20~30発は素手で殴ったとの証言もある。
 
 どんな理由があっても、暴力は許されない。まして横綱は相撲界の顔である。
 
 横綱審議委員会の横綱推薦内規は「品格、力量が抜群であること」を挙げている。
 
 もはや、日馬富士関は横綱としての資格がないと言われても仕方があるまい。
 
 貴ノ岩関側は鳥取県警に被害届を提出した。日馬富士関は刑事責任も問われよう。
 
 理解できないのは、日本相撲協会が、暴行を巡る報道を受けて、ようやく動き出したことだ。内部では既に話題になっており、事実上、問題を放置していた協会の当事者意識のなさにはあきれる。
 
 相撲界では2007年、時津風部屋で「かわいがり」と称する行為による力士暴行致死事件が起きた。10年2月には、横綱朝青龍が一般人に暴行したとされる問題の責任をとって引退している。
 
 不祥事のたびに、協会は綱紀粛正に努めてきたはずだ。しかし、依然として、相撲界の暴力体質は改まっていないと言える。
 
 危機管理委員会の本格的な調査は、千秋楽翌日の27日以降になる見込みだ。処分や調査結果は場所中には示さず、事実関係が判明するまで、先送りするという。
 
 協会は事態を重く受け止めて、日馬富士関に厳しい処分を課す必要がある。伊勢ケ浜親方は監督責任を免れず、巡業部長の貴乃花親方も危機管理委の指示に従う意向だ。
 
 協会の対応は迅速さに欠けるが、この機会に同様の暴力事件の有無も含めて、徹底的に調査すべきである。
 
 もちろん、真面目に稽古に励んで土俵を務めている力士までが、色眼鏡で見られることがあってはならない。
 
 恥ずべき暴力事件が、1年を締めくくる九州場所に水を差したのが残念でならない。
 
 ファンをこれ以上、失望させないためにも、力士たちの奮闘に期待する。礼儀作法にのっとり、正々堂々、土俵上で相撲道を体現してほしい。