鳴門市は、関西方面から見ると四国の表玄関といえる位置にある。全国的な知名度も高く、名実ともに徳島県のみならず四国をリードすべき都市のはずである。

 ところが、現状はいまひとつ活気が感じられない。

 国勢調査によると、鳴門市の人口は戦後ずっと6万人を上回っていたが、2015年に初めて割り込んだ。今年10月1日時点の推計人口は5万7657人に減っている。南側に隣接し、人口の増加基調が続く北島、藍住両町の合計人口(5万7546人)とほぼ同じになった。

 豊富な観光資源を生かし切れているとも言い難い。ブランド農産物を擁する農業には後継者不足という課題がのしかかる。市財政は依然として県内最悪の水準にある。

 鳴門市長選で泉理彦氏が無投票で3選を果たした。1、2期目で築いた基盤の上に各種施策を具体化させ、活気が戻ったと市民が実感を得られる市政を目指してほしい。

 市職員、市議を経て09年に初当選した泉氏は、学校施設耐震化、ボートレース鳴門の施設全面改修などを手掛けた。「派手さはないものの、地道に取り組んでいる」という周囲の評が示す通り、財政状況も勘案し、優先順位を付けながら知恵を絞ってきた跡がうかがえる。

 公共下水道事業を大幅縮小するとともに、老朽化した浄水場を北島町と一本化する道筋を付けた。子育て環境の整備を重視し、公共施設の耐震化では学校施設を優先した。

 一方で、積み残した課題も目立つ。汚水処理人口普及率は低迷しており、市庁舎は耐震性能を満たしていない。

 泉氏は3期目も子育て支援に力を注ぐとし、公約として▽就学前教育の充実▽「暮らしのサポートセンター」の設置▽市役所本庁舎の建て替え検討―などを掲げた。

 特に急がれるのは市役所本庁舎の対策である。建て替える場合は大きな財政負担を伴うため、市民の理解が欠かせない。文化会館などと同様、「モダニズム建築の権威」として知られる増田友也・元京都大教授の作品であることも考慮すべきだ。

 来年に迫った「第九アジア初演100年」に関連する各種事業は、一過性に終わらせない工夫が求められる。渦潮の世界遺産登録に向けた機運の醸成も重要だ。

 子育て支援は他の自治体も力を入れており、独自性、優位性を打ち出すのは容易ではない。学校施設耐震化に加え、一歩突っ込んだ取り組みが必要になるだろう。

 もちろん、財政健全化の努力も続けなければならない。

 無投票は1991年以来となる。選挙戦を通じ、市民が市政について考えを巡らせる機会が失われたのは残念だ。

 市民は泉氏に白紙委任をしたわけではない。むしろ、一段と注意深く市民の声に耳を澄ませる必要があると肝に銘じ、3期目の市政運営に当たってほしい。