住民の不安を置き去りにした再稼働は認められない。

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働に、西川一誠知事が同意した。これを受けて、関電は来年、2基を順次稼働させる計画だ。

 大飯原発の約14キロ西では、関電高浜3、4号機(高浜町)が既に再稼働しており、近接した複数の原発が同時に稼働することになる。2011年の東京電力福島第1原発事故以来である。

 にもかかわらず、住民の避難計画は両原発で同時に事故が起きた際の対応を考慮していない。大飯原発には、耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)が過小評価されているとの指摘も出ている。

 関電は再稼働で火力発電の燃料費が削減でき、収支改善を図れるとしているが、利益優先の姿勢は国民の理解を得られまい。

 避難計画は政府と福井、京都、滋賀の3府県が策定し、10月に政府の原子力防災会議が了承した。対象は、原発の半径30キロ圏に入る3府県の住民計約15万9千人に上る。

 居住府県内だけでなく、大阪、兵庫、徳島に避難するケースも含め、事故の状況に応じて自家用車やバスを利用するという内容だ。

 ただ、想定は大飯原発単独の事故だけで、住民の懸念は強い。特に大飯、高浜両原発に挟まれた地域の人たちは同時に事故が起きた場合、東西どちらに逃げても原発に向かっていくことになる。

 災害リスク学の専門家は「地震や津波の被害が一方のみで生じるとは考えにくい」と批判している。政府は同時事故への対応は「検討すべき課題」とするが、あまりに不誠実だ。

 基準地震動が過小評価となっていると指摘したのは、元原子力規制委員長代理で大飯原発の地震対策を審査した島崎邦彦東京大名誉教授である。退任後に計算式を検証して分かったという。

 再検証した原子力規制委は、基準地震動の見直しは不要としたものの、仮に耐震性が不足しているとすれば深刻な事態になりかねない。規制委は、これで安全を最優先したと言えるのか。

 西川知事が同意に当たって重視した、使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設の県外立地についても、実現する保証はない。

 関電の岩根茂樹社長は、18年中に計画地点を示す方針を表明したが、隣接する京都府が「受け入れ反対」を明言するなど、建設地探しが難航するのは必至だ。

 使用済み核燃料は原発内のプールに貯蔵しており、大飯、高浜両原発は再稼働から5年程度で満杯に近づくと試算されている。

 保管場所も決まらないまま、使用済み核燃料を増やし続けるのは無責任と言うほかない。

 問題を先送りしたままで再稼働を急ぐ姿勢は、到底許されない。