氷山の一角ではないか。これだけ不正が次々に発覚すると、そう思わざるを得ない。
 
 神戸製鋼所に続き、三菱マテリアルの子会社3社と東レの子会社が、製品検査データを改ざんしていたことが相次いで分かった。
 
 いずれも日本を代表する企業であり、高度成長期から国内の製造業を支えてきた素材メーカーだ。「ものづくり日本」の信頼が大きく揺らいでいる。
 
 各社が再発防止を徹底するのはもちろん、産業界全体で事態を深刻に受け止め、改めて自社の体制を点検してもらいたい。
 
 三菱マテリアルの3子会社はゴムや銅、アルミなどを素材とした部材を作り、全国の2千社以上に販売している。部材は自動車や航空機など、幅広い最終製品に使われる。
 
 東レの子会社はタイヤの補強材などを製造し、タイヤメーカーなどに納入している。
 
 各社は、部材が使用された製品の安全確認を急がなければならない。
 
 不正の態様はほぼ共通していた。顧客と取り決めた仕様を満たさない不合格品の数値を改ざんし、顧客に無断で出荷するというものである。
 
 素材業界には、顧客の了解を得て、わずかに仕様を満たさない製品でも価格を割り引くなどして引き取ってもらう「特別採用」(トクサイ)と呼ばれる商慣行がある。
 
 これを悪用し、トクサイの範囲内として納入していたわけだ。
 
 中でも、東レの子会社は品質保証室長が2代にわたって不正を続けていた。その一人は「(再検査や顧客との交渉になると)業務が煩雑になるから」と、改ざんを始めた理由を説明したという。
 
 モラルの低下にあきれるばかりだが、背景には、長引くデフレの影響による現場の疲弊があるともいわれる。
 
 コスト管理が厳しくなる一方で賃金は伸びず、人員が減って仕事量が増え続ける。納期優先のプレッシャーも大きい。不正は断じて許されないが、現場が追い詰められている実態があるとすれば見過ごせない。
 
 経営の多角化で企業統治が利かなくなった弊害も指摘されている。経営陣が全体を見渡すことが難しくなっているのは事実だろう。
 
 だが、厳しく問わなければならないのは、その経営陣の姿勢である。
 
 三菱マテリアルの子会社の一つは問題を把握した後、約8カ月も出荷を続け、公表したのは出荷停止の約1カ月後だった。東レ子会社は問題を知ってから、1年4カ月も公表していなかった。
 
 東レの社長は、神戸製鋼のデータ改ざん問題がなければ公表しなかったとの考えも示した。経団連の会長を出している企業のトップとは思えない発言に驚かされる。
 
 産業界の信頼回復には、企業モラルの向上とともに、情報開示に対する意識の改革が必要である。