日本が新たな自由貿易の扉を開いた。欧州連合(EU)との間で、経済連携協定(EPA)交渉が妥結した。
 
 協定が発効すれば、世界の国内総生産(GDP)の約3割を占め、約6億4千万人の人口を持つ世界最大級の巨大経済圏が誕生する。
 
 高い水準で関税を相互撤廃し、貿易を活発化させる協定の効果に期待したい。
 
 トランプ米政権が保護主義の動きを強める中、日本とEUが世界に自由貿易推進の意志を示した意義は大きい。
 
 米国の環太平洋連携協定(TPP)離脱を受け、先月には日本など11カ国が新協定に大筋合意したばかりだ。
 
 日本がアジア太平洋地域と欧州の国々との間で、多くの工業品や農産物に関して、自由度の高い貿易を展開できる時代が到来しそうだ。
 
 協定は、2019年の早い時期に主要部分の発効を目指す。人口減少による国内市場の縮小が見込まれる状況で、日本企業がビジネスを拡大する絶好の機会となろう。
 
 日本は94%、EUは99%の品目で関税を撤廃する。EU産品では、豚肉、パスタ、ワイン、チーズなどが値下がりし、消費者はメリットを実感することになる。
 
 一方、輸入産品の攻勢にさらされる農家や生産者に対しては、手厚く、きめ細かな支援策が欠かせない。
 
 政府はTPPへの対応を含めた農業の競争力強化策として、17年度補正予算案に3千億円超を計上する。
 
 継続的な予算措置が必要だが、後継者育成を含めて農林業などを安定させる取り組みは、容易ではあるまい。
 
 製造業界は協定を歓迎しているようだ。EUは日本の自動車に10%の高い関税をかけているが、発効から8年目に撤廃される。自動車業界の悲願であり、欧州市場での販売を後押ししよう。
 
 日本酒は関税が即時撤廃される。国内消費が伸び悩み、海外に活路を求めてきた酒造会社には、大きな追い風である。緑茶など幅広い食品の関税がゼロになる。
 
 日本とEUは「保護主義の誘惑に対抗し、世界経済が自由で開かれた公正な市場に基づき機能するよう取り組んでいく」という首脳声明を発表した。
 
 気になるのは、重要な課題が積み残されたことだ。投資に関する企業と国家の紛争解決手続きで日本とEUが折り合わず、棚上げした。
 
 妥結を急いだのは、台頭する保護主義に対する危機感の表れだろう。
 ただ、紛争解決手続きについては年明け以降に交渉が続くが、どんな着地点を探るのか、先行きは見通せない。
 
 日本にとってEPAは、はっきりとした成果が見込める経済政策の一つである。
 
 安倍晋三首相は「成長戦略の切り札」としている。いかに国内産業への打撃を小さくし、輸出振興の成果を引き出すのか。効果的な戦略が求められよう。