「談合と決別する」と宣言していた大手ゼネコンの決意は、一体何だったのか。

 総工費が9兆円に上る巨大プロジェクト「リニア中央新幹線」の工事を巡り、東京地検特捜部の捜査が広がりを見せている。

 発端は、名古屋市の非常口新設工事を約90億円で受注した大林組が、業者選定の過程で他のゼネコンに受注希望の意向を示し、協力を要請したとされる入札妨害事件だ。

 要請に応じた他のゼネコンは、大林組よりも高い見積価格を提示したといわれる。

 不正行為が本当なら公正、公平であるべき入札制度の根幹を揺るがす事態だ。信用失墜は避けられないだろう。

 適正な競争が行われていれば、工事発注者のJR東海はより低い価格で契約できていたとの指摘もある。リニア整備計画には、国の巨額融資が投入されていることを忘れてはならない。

 非常口新設工事の発注を巡っては、JR東海の担当者が工事に関する技術仕様などの非公開情報を大林組に漏らした疑いも浮上している。

 大林組は、そうした非公開情報を利用し、受注活動を有利に進めたとされる。

 リニア工事には、用地買収や環境対策などの面で多くの自治体が関わっている。その意味で公共事業そのものであり、業者選定を適正、公正に行わなければならないのは言うまでもない。

 選定過程でどんな不正が行われたのか。組織上層部の関与はどうなのか。特捜部は徹底的に捜査し、早期に実態を解明してもらいたい。

 リニア計画の背景には、50年以上が経過した東海道新幹線の経年劣化がある。南海トラフ巨大地震などの大規模災害に備えたプロジェクトでもあり、東京一極集中を緩和する効果も期待されている。

 完成時期に遅れが生じるなど影響が出ないよう、JR東海も独自調査をしっかりと進め、再発防止策を講じていかなければならない。

 非常口新設工事の選定手続きは、「公募競争見積」と呼ばれる2段階方式で行われていた。だが、1次審査で最も高い評価を受けた業者が、事実上、工事を受注する仕組みだったとの指摘もある。そうした選定方式に問題があるなら、JR東海は早急に仕組みを改善すべきだ。

 リニア関連工事は、これまでに計22件の契約が締結されている。このうち大林組、鹿島、清水建設、大成建設の大手ゼネコン4社が代表の共同企業体(JV)が、全体の7割に当たる15件をほぼ均等に受注していた。そこに不正行為はなかったのかどうか。

 強制捜査を受けたゼネコン各社は、過去に談合や独禁法違反などでたびたび摘発されてきた。不正行為を反省し、談合を根絶するとした声明も出したはずである。

 旧態依然の体質を改めさせるためにも、特捜部には大規模工事も含めて厳正な捜査を求めたい。