「政治とカネ」の問題は尽きないが、一つの事象が表面化するたびに再発防止の議論が交わされるのが常だ。全体としては少しずつ改善の方向に向かっているというのが一般的な受け止め方だろう。
 
 ところが、神山町議会では、町議選の出馬断念工作を巡り、50万円の現金がやりとりされたとみられることが徳島新聞の報道で明るみになった。「まだこんなことをしているのか」とあぜんとした町民、県民は多いだろう。
 
 町議選があったのは2015年12月。町議だった男性に立候補を断念するよう他の町議らが働き掛け、結果的に出馬を見送った男性に5町議が10万円ずつ、計50万円を無投票当選の後に渡した―のが大筋の証言内容である。
 
 男性は取材に対し、50万円を12月末に受け取り、数日後に返還したと話した。一つの封筒の中に5町議の名前が書かれた10万円入りの封筒が五つ入っていたとする証言は細部に及んでいる。
 
 渡した側とされる5町議は否定していたが、取りまとめ役といわれる町議の後援会幹部が「見舞金」の趣旨だとしながらも授受を認めた。この町議本人も「(現金が)もんてきた(=戻ってきた)のが唯一の救い」と、授受を事実上認める説明をしている。現金提供を他者から持ち掛けられたと話した町議もいる。
 
 情報を総合すると、現金授受があった蓋然(がいぜん)性は高いと言わざるを得ない。町議選直後というタイミングであり、出馬の断念工作とは関係ないとする釈明は説得力に欠ける。
 関係する町議は疑問に正面から向き合うべきだ。議員報酬をカットする方針というが、事実の解明が先である。
 
 神山町議会といえば、昨年10月、全10町議が町長と共に計画した東京への陳情の際、日程に浅草観光を組み込んでいるとして批判を浴びたことが記憶に新しい。
 
 最終的に日程から外したとはいえ、当時、問題点をしっかりと認識した町議がどれほどいただろうか。感覚が有権者とはかけ離れており、そうした認識のずれが今回の現金授受疑惑にも通底する要因であるように思えてならない。
 
 疑惑を問題視する一部の町議は、自主解散を求める構えを見せている。自浄能力にもはや期待できないと考える多くの有権者もこの動きに賛同するのではないか。
 
 各地の地方議会では、議員のなり手不足が深刻化している。神山町もそうした現状にあるが、2年前の町議選も無投票にするため、出馬断念の働き掛けがあったとすれば、由々しき問題である。
 
 無投票は有権者の貴重な投票機会を奪う。有権者のチェックをくぐり抜けていない議員の質が低下する恐れもある。最終的に損失を被るのは有権者だ。
 
 人口減少で過疎の自治体の多くは将来展望すら描きにくい時代である。議員が無投票工作などしている場合でないのは明らかだ。