新幹線は1964年の開業以来、脱線や故障による「乗客の死亡事故はゼロ」だ。その実積への過信はなかったのか。
 
 博多発東京行きのぞみ34号で焦げたような臭いや異常音が認められた。だが、千人の乗客を乗せたまま3時間以上も走行を続け、名古屋駅でようやく運行を取りやめたのだ。
 
 車体と車軸を固定する鋼製の台車枠に亀裂があり、破断まであと3センチほどだった。JR西日本は「脱線に至ったかもしれない」との認識を示している。
 
 新幹線では初の重大インシデントと認定され、運輸安全委員会などが調査を進めている。
 
 脱線していれば、大惨事を招いた可能性がある。徹底した原因究明と再発防止策が必要だ。
 
 問題は幾つかある。岡山駅で乗車した車両保守担当社員が、新大阪駅での床下点検を要請したが、東京の指令員が聞き逃していたことが分かった。
 
 しかも、JR西の乗務員は新大阪駅でJR東海の乗務員に引き継ぐ際、「異臭はあったが異常はない」と口頭で報告した。
 
 尼崎JR脱線事故を教訓に定めた「安全憲章」には「判断に迷ったときは、最も安全と認められる行動をとらなければならない」とある。おろそかにすべきではない。
 
 JR西の来島(きじま)達夫社長は異常を認識しながら運転を続けたことについて「早い段階で止められたはず。これまでのリスク管理が不十分だった」と述べた。
 
 しっかりと検証して説明しなければ、利用者は納得しないだろう。