人の一生を左右する入学試験は、厳正かつ公平に実施されなければならない。

 ところが、取り返しのつかない間違いが起きた。

 大阪大が昨年2月に実施した入試の物理科目で出題と採点にミスがあり、不合格とした受験生30人を新たに合格させた。

 対象者と個別に面談して慰謝料などの補償を検討し、希望者については今年4月の入学を認める。

 受験生は長い歳月、膨大なエネルギーを注いできた。採点ミスのせいで、他の大学に入学した学生もいる。

 第1志望校に受かるのと、滑り止めの大学に進むのでは雲泥の差がある。不合格で味わった悲哀は計り知れない。大阪大は償い切れるのか。

 大阪大によると、ミスがあったのは物理が必須科目の工学部、基礎工学部、理学部の一部学科の受験生など3850人が受験した問題だ。複数の解答が正しかったが、特定の解答のみを正答としていた。この解答を前提にした次の問題も不適切とした。

 ずさんな出題だったと言われても仕方があるまい。問題や解答の作成過程で、入念なチェックをしていれば、防げたミスではないか。

 もう一つ、疑問なのは、今ごろになって、ミスがあったと発表したことだ。対応が遅いとのそしりは免れない。

 昨年の6月と8月に、外部から指摘があったが「大学側の解答が正しい」として対応できず、昨年12月にあった3回目の指摘でミスだと分かったという。

 比較的早い段階の2回の指摘をなぜ、生かせなかったのか。大阪大は出題と採点を誤った経緯や、外部からの指摘に適切な対応ができなかった原因を調べる。徹底的に検証し、信頼の回復に全力を挙げなければならない。

 このほかに9人が同じミスの結果、大阪大の第2志望の学科に入学している。第1志望だった学科に移ることを希望する場合は認める。

 本来合格していた30人を不合格にした一方で、本来不合格だったのに合格となった受験生も同数程度いた。

 大阪大は「入学した学生に責任はなく、本人に一切通知しない」として合格を取り消さない方針だ。

 もちろん、採点ミスによって合格した学生には、全く落ち度がない。いまさら不合格にはできまい。

 しかし、釈然としないものが残る。大学受験の公平性がゆがめられたからだ。この事実はもう変えようがない。

 大阪大はこの問題で、西尾章治郎学長ら10人が既に受け取った役員報酬の一部を返納すると発表した。いずれも10%で期間は1~3カ月だ。

 事態についての認識が甘くはないか。出題者ら関係者の厳正な処分も求められる。

 文部科学省は、全国の大学に、合否判定ミスの防止策の実施を促した。大阪大の事例と調査結果を、再発防止に生かしたい。