自民党が圧勝した昨年の衆院選の後、初めての通常国会が開幕した。

 安倍晋三首相が掲げる「働き方改革」と、憲法改正を巡る論議が大きな焦点である。

 首相は施政方針演説で「働き方改革」を断行すると強い意欲を示し「誰もが能力を発揮できる、柔軟な労働制度へ抜本的に改革する。70年ぶりの大改革だ」と訴えた。

 働き方改革関連法案は残業時間の上限規制を定める一方で、一部専門職を労働時間規制の対象外とする「高度プロフェッショナル制度」が盛り込まれる。

 野党は「残業代ゼロ法案」だと反発するが、批判にとどまらず、対案提出を含めて、よりよい働き方を提言してもらいたい。

 憲法改正について、首相は「未来を見据えた国創りを行う」と述べ「各党が憲法の具体的な案を国会に持ち寄り、憲法審査会において、議論を深め、前に進めていくことを期待する」と呼び掛けた。

 演説の最後で言及するにとどめたのは、野党の反発をかわす狙いもあるのだろう。

 各党の主張には隔たりが大きい。与党内でも9条改正でかなりの温度差があり、合意形成の難航は必至だ。

 憲法審査会では急がず丁寧な論議を心掛けてほしい。改憲勢力は衆参で発議に必要な3分の2以上の議席を占めるが、万が一にも少数政党を置き去りにしてはならない。

 今国会でも、官僚の政権への忖度(そんたく)が指摘される森友、加計(かけ)学園問題は見過ごせない。

 昨年の特別国会では森友問題で、特例を重ねた異例の対応の一端を示す音声データの存在が明らかになった。

 会計検査院は、約8億円の国有地の値引きを「根拠不十分」と指摘したが、そんな取引に至った理由も背景も分かっていない。むしろ、疑問は広がるばかりである。

 首相は「丁寧に説明する」と約束したはずだ。疑問に真正面から答えてもらいたい。

 政府・与党には、謙虚で丁寧な国会運営を望みたい。

 自民党は国会改革の一環として、与野党の質問時間の配分見直しを要求しているが、数頼みの印象は拭えない。

 森友、加計を巡る野党の厳しい追及から首相を守ろうという狙いも透けて見える。

 昨年は一度も行われなかった党首討論の積極開催も、野党に働き掛けている。それによって、予算委員会への首相の出席を減らすべきではない。大切なのは、国会改革の名に値する見直しである。

 自民党には、首相の国会出席の負担を軽減すれば、外交の機会を増やせるとの意見もある。一案だが、内政や首相自身への質問にしっかりと答えた後で考えてはどうか。

 安倍政権に対抗する野党は一体感に乏しい。希望の党と民進党の統一会派の結成を巡る足並みの乱れは、図らずも仲間割れ体質を露呈した。

 巨大与党の独走を食い止めるためには、野党間で連携を深めることが欠かせない。