来月9日の韓国・平昌冬季五輪開会式に、安倍晋三首相が出席する意向を表明した。

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が従軍慰安婦問題を巡る日韓合意を批判したことから、首相の訪韓には官邸や自民党の一部などに慎重論があった。

 出席を決めたのは、日韓関係や日米韓連携の維持を重視したためとみられる。

 最も近い隣国で開かれる五輪であり、2020年には東京五輪・パラリンピックが開催される。さらに22年には北京冬季五輪もある。

 同じアジアの国の代表として、政治とスポーツを切り離し、お祝いに駆け付けるのは賢明な判断といえよう。ここは「大人の対応」で、未来志向の関係改善を目指してもらいたい。

 日韓合意について、文政権は再交渉を求めないとしつつ「合意では問題解決はできない」として、日本に謝罪を求める新方針を打ち出した。

 これに日本政府が反発したのは当然である。「最終的かつ不可逆的な解決」は国と国とが確認したものであり、政権が代わったからといって覆すことは許されない。

 安倍首相は、文氏との首脳会談に関し「日本の立場をしっかりと伝えたい」と述べた。開会式への出席が、韓国への誤ったメッセージとならないよう、毅(き)然(ぜん)とした態度で臨む必要がある。

 文氏も合意の意義を十分に考え、履行に努めるべきだ。

 核・ミサイル開発を進める北朝鮮への対応が重要なのも言うまでもない。

 五輪を機に南北対話が再開されたのはいいが、国際包囲網が緩む恐れは拭えない。訪韓するペンス米副大統領とそろって、圧力強化や日米韓の緊密連携の必要性を文氏に直接伝え、くぎを刺す意義は大きい。

 平昌五輪の成功を最重要課題に位置付ける文政権は、安倍首相の出席を「両国関係の発展に助けとなる」と歓迎の意を示した。

 日米中ロを「周辺四大国」として重視する韓国だが、中国が共産党序列7位の政治局常務委員の派遣にとどめるなど、いずれの首脳も訪韓の見通しが立っていなかった。

 これを国内メディアから批判的に報道されていた文氏にとって、首相の訪韓は「助け船」に違いない。

 出席する利点に比べて、欠席した場合のマイナスは小さくない。

 日韓関係が一層冷え込むのはもちろん、五輪に政治を持ち込んだと国際社会から見られかねないことだ。早期の日本開催を目指す日中韓首脳会談への支障にもなる。何より、2年後に五輪を控える国として得策ではなかろう。

 利害が絡み合う中、外交には、国益優先の冷徹な判断が求められる。同時に、互いの事情や国民感情をくみ取る姿勢も欠かせない。

 大事なのは、粘り強く対話を重ねることである。首相の訪韓が関係改善の契機となるよう望みたい。