米国のトランプ大統領が、環太平洋連携協定(TPP)への復帰を検討する意向を初めて表明した。
 
 トランプ氏は、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で演説し「全ての国の利益になるならば、TPP参加国と多国間で交渉することを検討する」と述べた。
 
 「米国第一主義」を掲げて、多国間の通商を批判してきただけに、唐突な印象は否めない。
 
 一方で、日本など11カ国が米国抜きの協定で合意し、3月に署名式を行うことを決めた直後というタイミングでもある。
 
 復帰を完全に否定してきた従来の方針を転換するのか、それとも、11カ国の協定をけん制する狙いなのか、その真意を見極める必要がある。
 
 トランプ氏は大統領に就任した昨年1月、TPPから永久に離脱する大統領令に署名した。
 
 その後、日本が主導し、米国抜きの11カ国の協定で合意に達した。署名後、6カ国以上の国内承認が完了すれば、2019年にも発効する。
 
 ただ、米国の離脱に伴い、参加国全体の経済規模は世界の国内総生産(GDP)の約38%から約14%に低下し、十分な効果は見込めない。
 
 米国が復帰へとかじを切るのなら、歓迎すべきだ。
 
 復帰すれば、アジア太平洋地域をカバーする貿易・投資ルールを確立する本来の目的が達成される。
 
 そもそも、日本が11カ国のTPPを主導したのは、米国に復帰を促す狙いがあった。 著作権の保護期間を70年にそろえる規定など22項目の効力を凍結するのも、米国の復帰に備えての措置だ。
 
 安倍晋三首相は衆院予算委員会で、トランプ氏の意向を「歓迎したい」と述べたが、米国を含む12カ国での合意を「変えるのは極めて難しい」と、再交渉には否定的な姿勢を示した。
 
 日本は11カ国のTPPの締結、発効を優先するが、当然の判断である。既に日本は12カ国のTPP交渉で、農産物の市場開放を巡って最大限の譲歩をした。再交渉になれば米国が一層の要求を突き付けてくるのは必至だ。
 
 あくまでも、12カ国の合意を守るよう、米国を説得するのが日本の役割である。
 
 アジア地域の貿易、投資の主導権を握ろうとする中国に対抗する意味からも、米国はTPP交渉の合意を尊重しなければならない。
 
 トランプ氏は昨年、離脱を表明した地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」についてもたびたび、「復帰は考えられる」としてきた。しかし、離脱の撤回には動きだしていない。
 
 米国議会での一般教書演説では「悪い通商協定は修正し新たな通商交渉を始める」と従来の立場を繰り返したが、TPPには言及しなかった。
 
 何を考えているのか、分かりにくい大統領である。言動を注視しなければならない。