<大寒と敵のごとく対ひたり>富安風生。なかなかに手ごわい相手である。北に暮らす友人から、しょせんは四国じゃないか、と言われたところで気休めにもならない。一年で最も寒さの厳しい時季になった

 澄んだ夜空に星も冴える。感傷的な気分もほんの一瞬。寒気は、よくも分かったな、と感心するほどの探索力で、着ぶくれた服の間から入り、わずかな隙間、そのままの形で肌を刺す

 身をもって知る「歳寒」。論語「歳寒の松柏」は冬になっても緑を保っている松や柏(ここでは中国北西部原産のコノテガシワ)のごとくに、苦しくても節操を曲げず屈しないこと。まるでこの人の生き方のようである

 吉報が届いた。腰の骨を折り、療養生活を送っている瀬戸内寂聴さん(92)が、自分の足で歩けるようになったとか。まだペンは持てないそうで「4月の花祭りごろには」と、意欲を見せる。時代に必要とされている作家だ。思いをもっと世に問うていただきたい

 「失礼ですが」のお年での、この回復力。たった今、病床にある人たちを、勇気づけることにもなろう。それが若い人ならば、なおのこと。寂聴さんに負けてはいられない

 <冬来たりなば春遠からじ>。困難に直面している人に、英国の詩人シェリーの一節を。真理は、言い古されたことばの奥に宿っているのだろう。