人生は美しいー。映画「ライフ・イズ・ビューティフル」は、ナチス・ドイツの強制収容所にとらわれたユダヤ系イタリア人家族の物語を通して、それを証明してみせる

 希望の灯を消すまいと、父は幼い息子に命を懸けてうそをつく。「これはゲームだ」と。監督で主役も務めたロベルト・ベニーニさんは、もともと喜劇人。機関銃のように繰り出す言葉には、ユーモアがあふれ、悲しみが満ちている

 程なく、息子が聞きつけてくる。「ぼくたちはボタンやせっけんにされる。かまどで焼かれるって」。そんなばかなことがあるはずないじゃないか、と父は懸命に否定するが、現実は…
 
 ユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)の象徴であるアウシュビッツ強制収容所が解放されて70年になる。犠牲者はこの収容所だけで少なくとも110万人に上る。約90万人は、到着直後にガス室などで殺されたという。物語の入り口にすら、ほとんどがたどり着けなかった。解放時の生存者はわずか7千人ほど

 こんなことが、なぜ人間に、と思う。いや人間だからこそか、と思い返す。「実際に起こったことは再び起こりうる、どこでも起こりうる」。イタリア人生還者の懸念通り、虐殺はやむことがない

 世界には、今も命の「ゲーム」を続けている親子がいるのだろう。助けを信じて待っている親子が。