出会いと別れ、人の行き交う春である。初めましてと、さよならと。同じこずえを見上げても、思いは人さまざま。この時季だからこその感情を呼ぶ花。陽気に誘われて、当地の桜もようやく起き出した

 花びらの数と人の数とは正比例するか。徳島中央公園には、はや、宴を楽しむ人の姿があった。<桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる!>と肩に力を入れることもなく。二心ない花の、純な様子に感心しながら、腰を下ろし、陽光を浴び、つかの間の午睡、夢かうつつか。<青空や花は咲くことのみ思ひ>桂信子

 桜は夏ごろ、翌春の花芽を準備し、休眠状態に入る。眠りから覚めるには、一定の期間、冬の寒さにさらされる必要がある。そして気温の上昇とともに成長する

 ために、十分気温の下がらない沖縄では、四国や九州、本州で主流のソメイヨシノは咲かず、桜といえばヒカンザクラになる。ソメイヨシノには北限もある。北海道の気象台の標本木はエゾヤマザクラが多い

 南北に長い日本列島約3千キロ。1月半ばの沖縄に始まる花の波は、5月には北海道に届く。その間、徳島の開花時季は絶妙だとあらためて思う

 4月に新社会人、新入学という人も多いはずだ。花満ちる中での門出。毎年のことながら、何とすてきな春だろう。<人はみななにかにはげみ初桜>深見けん二。