昔話を一つ。わなにかかった鶴を助けたおじいさんの元を、娘が訪ねて来る。娘はきれいな布を織りたいが、織る姿を見ないでと頼んだ。気になったおばあさんが部屋をのぞくと、鶴が布を織っていた。正体を知られた鶴は布を残して大空に去っていく。善意をベースに、信義を守ることの大切さも説いた話だ
 
 この「鶴の恩返し」には、さまざまなバージョンがあるようだ。おじいさんが部屋をのぞくと、家財道具はすっかりなくなり、もぬけの殻。遠くに、たんすを担いで逃げていく鳥の姿があった。それを見たおじいさんは叫ぶ。「あっ、あれは鶴じゃなくて、サギだったんだ」
 
 鳴門市の電柱に国の特別天然記念物のコウノトリが営巣した。鶴だと思った人はコウノトリと聞いてびっくり。足輪から、兵庫県豊岡市の人工巣塔で生まれた雄だと分かった。雌の1羽と共に行動している
 
 西洋にはコウノトリが赤ん坊を運んで来るという伝承がある。では何かの吉兆か? 少子化と人口減少に悩む徳島県は今、地方創生の取り組みの最中。コウノトリは電柱の上で、子育ての大切さを伝えたいのだと思いたい
 
 それが、人の助けで繁殖できたコウノトリの恩返しかどうかは別にして。地元作家が阿波版の「恩返し」を書き下ろすのも一興。地方の悩み深き昨今である。笑い話の一つもほしい。