「らしくない」。一報を聞いて思った。いや、これまではドイツのイメージ戦略の手の内にあったのか。あまりにもあくどい手口に思い返した。米国で発覚した自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス規制逃れである
 
 大気汚染に苦しんだ日本では、ディーゼル車は環境に悪い印象がある。温暖化対策の意識の高い欧州では逆だ。ガソリン車に比べて燃費が良く、二酸化炭素の排出量が少ないため、今では新車の半数をディーゼル車が占める
 
 無論、前提となるのが排ガスの浄化である。自動車各社は、有害物質の排出を抑え、なおかつ車の性能を落とさない工夫にしのぎを削ってきた
 
 当局の検査のときだけ排ガス浄化機能がフル稼働するよう、車に違法なソフトを組み込んで、VWは規制をかいくぐっていた。通常走行時は、車に負荷のかかる浄化機能を低下させる寸法だ。似た手口は昔からあって、国内でも、東京都が日本車の不正を告発したことがある
 
 米国では法令で禁じられており、2兆円を超す制裁金が科される可能性があるという。対象車は世界に1100万台。欧州でも不正に手を染めていた
 
 危機は一企業にとどまらない。技術大国で環境先進国といったドイツの国のイメージをも失墜させる不祥事である。「らしいね」とうならせるほどの対応策がとれるかどうか。