「僕って何」は、三田誠広さんの1977年芥川賞受賞作。そんなセンチメンタルな言い方をしなくても自分とは何かと腕組みすれば…。いやはや簡単に見つかるものでもないらしい。答えを探しに旅へ出る人もいるぐらいだ
 
 悩みの解消には遠かろうが近々、簡易書留で自宅に郵送されてくるのも、まごうかたなき「僕」である。国民一人一人に番号を割り当てるマイナンバー制度が本格的に始動した
 
 あなたは123456789012、私は123456789013といった調子だ。囚人でもあるまいし、あまり気分のいいものではない。作家オーウェルの言葉でも引き、すわ監視国家の誕生か、とでもいきたいところだが、心配しすぎか
 
 税と社会保障、災害関連の個人情報を一つの番号で管理し、脱税や生活保護の不正受給を防ぐとともに、行政事務の効率化を図るのが、そもそもの狙いだという。「僕」が誰かを見極めて、目指すは「公平で公正な社会」というわけである
 
 それでも便利と危険は背中合わせ。年金情報の大量流出問題で、国の情報管理の甘さが露呈したばかりだ。資産状況など、番号と結びついた個人情報が守られるのか、懸念は大きい
 
 マイナンバーって何という人も少なくない。他の誰かがこの「僕」を丸裸にする事態は、是が非でも防いでもらわねばならぬ。