色があるなら、独裁と粛清、暗殺は同系色である。拉致を加えてもいい。無論、明るい色ではない。背筋に氷を当てられたときのような、身も震える色合いだろう

 金正男氏がマレーシアで殺害された。きょう生誕75年を迎える北朝鮮の故・金正日総書記の長男で、金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄である。ふくよかな、人の良さそうな笑顔を思い出した人も多いはず

 2001年、偽造旅券で日本に入国しようとして強制退去処分となった。東京ディズニーランド見物が目的だったという。この失態で、金総書記の後継レースから脱落している

 三代の世襲を批判したことはあっても、故国の体制には、ほとんど影響力を持っていなかったとされる。では、どうして。かの国の犯行とすれば、不満分子の結集軸となるのを恐れたか。建国の父、故・金日成主席から続く「白頭山の血統」の一員。世襲国家なるがゆえ、身の内を流れる赤い血を恨むほかはない

 疑心暗鬼は独裁者につきものとはいえ、粛清に暗殺、核にミサイル。無理を通して命を奪う。こんなことがいつまで許されようか

 ノーベル賞詩人のタゴールが書き残している。<人間の歴史は虐げられた者の勝利を忍耐づよく待っている>(山室静訳)。圧政におびえ、声を潜めて暮らす北寒の民であっても、我慢には限度があろう。