旧暦2月の異称は「如月(きさらぎ)」。「衣更着」とも書く。衣をさらに着る、「きぬさらぎといふをあやまれるなり」と、江戸時代の歳時記「滑稽雑談(こっけいぞうだん)」にある

 それは間違い、と広辞苑はきっぱり否定する。<「生更ぎ」の意。草木の更生することをいう>。月も半ばをすぎ、春一番も吹いた。きのうは二十四節気の雨水。雪は散じ、氷が水に変わるころ。いのち転ずる時季である

 刈り込まれた街路樹もよく見れば、まさに枝を伸ばす準備中。深山の、人に見られることもない草木まで、花咲く日を指折り数えて待っているかと思えば、胸の奥からじわりと…。温かくなりかけたところで、音を立て、隣の同僚が鼻をこすった

 花粉症である。憂鬱(ゆううつ)なことにスギやヒノキの花粉の予想飛散量は、四国では昨季の倍以上、例年と比べてもやや多いらしい。当方もイネ花粉のアレルギーで、季節は違えど、そのつらさ、同病相哀れむの心

 症状のない人でも、花粉に触れ続けることで発症する場合があるそうだ。マスクやゴーグルも人ごとではないのだが、そのつらさに気づくのは、ずるずる、となって初めて

 冬ごもりの生き物たちは、あともう一眠り。暖かな日があり、衣をさらに着込む日がある。風景が色付くまで、しばらくはそんな日を繰り返しつつ、大地も、じわじわと暖まっていくようである。