よみ人知らず-。感傷を誘う言葉である。古今和歌集のこの歌は、誰が、どんな思いで作ったのだろう。<世の中は夢かうつつかうつつとも夢とも知らずありてなければ>。この世界、夢か、現実か

 韓国の朴槿恵(パククネ)前大統領が、収賄などの容疑で逮捕された。親友と共謀し、財閥企業のサムスンから約30億円の賄賂を受け取るなどした疑いが持たれている

 7平方メートル足らずの独房で今、何を思う。目の前にある冷たい壁は紛れもない現実だ。過ぎた日の栄華を振り返り、権力のはかなさをかみしめているところか

 古今集の歌の主とは違い、放っておいても歴史に名を残した人である。暗殺された朴正熙(パクチョンヒ)元大統領の娘にして韓国初の女性大統領。これに史上3人目の逮捕された大統領経験者というありがたくない経歴が加わった

 自身や親族の不正が発覚し、悲惨な末路をたどる元大統領が、韓国にはあまりにも多い。権限が強大すぎることが一因とされ、地元紙は「韓国の大統領制はもう寿命だ」と指摘する

 制度の問題だけでもなさそうである。「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」。格言が見事に当てはまる現実から脱却するには、もっと根深い場所から考える必要があろう。朴前大統領の名が、「国の転機」と合わせて記憶されるよう、政治も経済も社会も、徹底的に改革を。