「珍説愚説辞典」(国書刊行会)の[結婚]の項にこんな話が出ている。19世紀前半の書物「夫も父親ももういらない。神の子の天国」から

 <煩わしい結婚なる制度がなければ->。植物愛好家はどんな遠くの森にも喜々として行けるし、鉱物学者は地中をより深く、航海家は冒険に船出し、芸術や科学は洗練され、哲学者は知性の光を放つ。要するに家庭が足を引っ張っていると言いたいらしい

 <独身者の国民こそがやがて支配する>。そんな日が近づいているようである。50歳まで一度も結婚したことのない人の割合を示す「生涯未婚率」が過去最高を更新した。徳島県は全国平均より低いものの、それでも男性22・10%、女性13・23%

 1970年は男性1・69%、女性2・29%だった。“県民皆結婚”ともいえる状況が変わったのは、最近30年のことだ。非正規が40%に達する雇用の不安定化が背景にある。加えて価値観の多様化で、結婚にこだわらない人も珍しくはなくなった

 個人の自由ではあるが、政策的には悩ましい問題である。老後に身寄りがない人が増えると、介護や医療の受け皿も心配になる

 家庭の重しがなければ、さらに-。<軍事面では勇猛果敢な兵士が続出し、敵に向かって前進してゆくことだろう>(同書)。「神の子の天国」も、バラ色ではなさそうだ。