徳島大大学院医歯薬学研究部の井本逸勢(いっせい)教授(人類遺伝学)、増田清士准教授(同)、丹黒(たんごく)章教授(胸部・内分泌・腫瘍外科学)らの研究グループは、肺腺がんの発症や進行の原因として、がん抑制遺伝子「TRIM58」が働かなくなっていることを解明した。TRIM58をターゲットにした新たな肺腺がん診断法や治療薬の開発につながることが期待できる。

 肺腺がんは日本人の肺がんの中で最も発生率が高く、年々患者数が増加している。喫煙者、非喫煙者にかかわらず発症するのが特徴で、早期発見が難しく進行も早い。非喫煙者ら一部の患者への特効薬はあるものの、対象者が限られていたり、ほぼ確実に再発したりするといった問題があった。

 これまで、メチル基と呼ばれる分子が遺伝子に結合する「DNAメチル化」に異常を来すとがん抑制遺伝子が働かなくなり、がんの原因となることは知られていた。しかしその詳細は分かっておらず、解明が待たれていた。

 井本教授らは、喫煙者と非喫煙者の早期肺腺がん患者の組織を解析した。DNAメチル化異常によって働かなくなっている遺伝子を複数発見し、その中からTRIM58ががん抑制遺伝子であることを確認。がん細胞の増殖や腫瘍の形成を抑制していることも突き止めた。

 今後この研究結果をたんや血液を用いた診断に応用することで、早期に肺腺がんを発見でき、患者への負担も少ない診断法を確立することが期待できる。治療法としても、患者の体内にTRIM58を出現させることで肺腺がんの進行を抑制する新たな治療薬の開発につなげられる可能性がある。

 成果は米科学誌オンコターゲットに掲載された。