教育のためにより良き環境を、と引っ越しを繰り返し、最後に選んだ学校の門前で、わが子が学問のまね事を始めたのを見て、母はようやく腰を落ち着けた。孟母三遷(もうぼさんせん)の教えである
 
 小さなころとはいえ、やがて大思想家となる孟子の、あまりの流されぶりには恐れ入るが、子どもが環境に敏感であるのは確かだ。子の素質を伸ばせるかどうかは、おおむね保護者の双肩にかかっている、と言ってもいい
 
 日本女子ゴルフツアーで初の賞金女王となった鈴木愛選手(東みよし町出身)の場合も例外ではないようである。小学校のころから練習に付き合った父健司さんと母美江さん。この親にしてこの子あり
 
 愛父母三遷。高校進学の際は3代続いた製材店を閉め、ゴルフ部のある鳥取の倉吉北高へ、親子で。健司さんはそこでコーチを続けた。「娘の夢をかなえてやりたい」。その一心からの移住だった
 
 高校最後の試合の後、「プロになるなら、これからは自分でやれ。人に頼らず自分で考え抜け」と突き放して次へ進ませた。筆者も人の親なれば実感を込めて言わせてもらう。なかなかこうはいかない
 
 子の活躍はもちろん、何よりもうらやましいのは、親と子のしっかりとした関係である。日本勢としては4季ぶりとなる賞金女王は、子を信じ、親を信じて、一家で手にした栄冠なのだろう。