「千と千尋の神隠し」など、日本のアニメの評価が高いのは周知の通り。さりながら、とりわけうれしいニュースである
 
 映画「この世界の片隅に」が、「アニメ界のアカデミー賞」と呼ばれる米国アニー賞の長編インディペンデント作品賞の候補になった。県内でもユーフォーテーブルシネマなどで上映されたので、見た人は多いだろう
 
 舞台は、第2次大戦中の1944年から45年までの広島県呉市。18歳で広島市から呉に嫁いだ女性すずを主人公に、あの時代を生きていた普通の人たちの暮らしを、丁寧に淡々と描いた作品である
 
 制作の環境は恵まれていなかった。インターネットのクラウドファンディングで資金を集めるなどした。派手な宣伝はせず、昨年11月の公開時、上映館は全国で63館だけ。それが今年6月、観客数が200万人を突破する快挙を達成した
 
 評判を広げたのは、見た人たちの口コミだった。声高に悲惨さを叫ぶわけではない。目を見張る戦闘シーンもない。平穏な日常に少しずつ戦争の影が忍び寄る。空襲に見舞われ、そして広島市に原爆が落とされる
 
 じわじわと、きな臭さが増す今と似ているのも、多くの人の心に響いたのかもしれない。「戦争のことを自分たちなりにきちんととらえ、次の世代に伝えなくては」と片渕須直(すなお)監督。その言葉をかみしめたい。