将棋の羽生善治さんが史上初の7冠を達成し、安室奈美恵さんのファッションをまねた「アムラー」が流行語になった。美馬市脇町を舞台にした映画「虹をつかむ男」が公開されたのも、この年だ
 
 1996年はそんなに遠い昔ではない。なのに、こんな法律がそれまで残っていたとは。障害などを理由に不妊手術や人工中絶を認めた「旧優生保護法」である
 
 宮城県の60代女性が起こした国家賠償請求訴訟が、隠された被害の実態を浮かび上がらせた。女性は知的障害があり、15歳の時に不妊手術を強いられた。体調の悪化に苦しみ、子どもを産めないからと縁談も断られたという
 
 <あぜんとす人権無視の国の法>。提訴の翌日、本紙夕刊に載った時事柳壇である。非人道的な内容もさることながら、戦後間もなくから半世紀近くも見直されなかったことに驚く。支えたのは「優生思想」に基づく根強い偏見だろうか
 
 「不良な子孫の出生を防止する」。現代の感覚では到底考えられないけれど、国が進め、それを社会が後押しした。徳島県内でも391人が同意なしで手術を受けたとされる
 
 当時は適法だったと、国は謝罪も補償もしていない。理屈はそうだが、冷たく突き放していいものか。優生思想は今も消えず、時々姿を現している。勢いづかせないためにも、けじめをつけなければ。