都会で暮らすわが子に送るのだろうか。スーパーで買ったばかりの品物を段ボール箱に詰めていく。四隅に入れるのはレトルトカレーである
 
 その草分けは大塚食品の「ボンカレー」。発売から半世紀、販売数は30億食に上る。大塚グループを率いた大塚正士(まさひと)さんは「大衆の利益にならない商品は必ず滅びる」という言葉を残したが、大衆の支持と時代を先取りする力がなければロングセラーは生みだせない
 
 「照る日、曇る日、雨の日も変わる天気は景気も同じ」。足跡には、高度経済成長、オイルショック、バブルとその崩壊・・・が刻まれている。時代の光も影も、はやり廃りも乗り越えて、徳島生まれの国民食として定着した
 
 ライン生産だが、「お母さんの手作りを大切に、ジャガイモの芽取りやニンジンの皮むきなどは今も手作業」(堀内一彦広報室長)
 
 非常食の顔も持つ。開発段階で災害を想定していたかどうか定かではないが、被災者や支援者らの空腹を、どれほど満たしてきたか。元祖ボンカレーが販売の9割近くを占める、台風の多い沖縄では当初から備蓄食である
 
 立春が過ぎたとはいえ、春の足音はなかなか聞こえない。きょうもどこかで、誰かの一食になっているはずだ。今月12日は1968年にボンカレーが阪神地区で発売された日。「レトルトカレーの日」でもある。