韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との首脳会談が、来月末に開かれることになった。
 
 平昌冬季五輪を契機に南北の接触が進んでいるが、予想を超える展開である。
 平壌で韓国特使団と会談した金氏は、米国との対話の意思や朝鮮半島の非核化などにも言及した。
 
 南北の軍事的な緊張を緩和するためには、対話による意思疎通が不可欠なのは言うまでもない。
 
 だが、これまで北朝鮮は、非核化に向かう姿勢を見せる一方で核開発を着々と進めるなど、期待を何度も裏切ってきた。今回もその疑いは拭えない。
 
 日米韓など関係各国は北朝鮮の意図を見極め、冷静に対応する必要がある。
 
 韓国大統領府の発表によると、首脳会談は軍事境界線に位置する板門店の韓国側施設で行う。会談は2000年、07年に続いて3回目となるが、韓国側では初めてだ。
 
 米国との対話については、金氏は非核化問題と関係正常化のためとし、対話が続く間は核・ミサイル実験を凍結するとした。
 
 さらに金氏は、体制の安全が保証されれば核を保有する理由がないと述べ、米韓が来月から合同軍事演習を例年と同規模で行うことも「理解する」と表明した。
 
 核保有の放棄を示唆し、強く反発してきた軍事演習を容認するなど、大幅な譲歩と言えよう。
 
 ただ、従来と同様、核保有の放棄には「軍事的脅威の解消」や「体制保証」の条件を付けている。
 
 米国は北朝鮮の非核化が対話の前提としており、金氏がどこまで歩み寄るかは不透明だ。在韓米軍の縮小・撤退や韓国の非核化を条件にしてくる可能性もある。
 
 凍結するのは核・ミサイルの実験であり、開発ではない。長距離弾道ミサイル完成までの時間稼ぎではないかとの懸念は消えない。
 
 強硬一点張りだった金氏が路線を転換した背景に、国連による厳しい経済制裁の効果があるのは間違いない。
 
 見えてくるのは、融和に傾く韓国を取り込み、経済協力を引き出そうという狙いだ。米朝対話が実現すれば国際包囲網にも風穴を開けられる。
 
 北朝鮮が繰り返し取ってきた常とう手段だ。再び乗せられるわけにはいかない。
 
 重要なのは、完全かつ検証可能な非核化を北朝鮮に約束させることだ。国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れは、その最低条件となる。
 
 北朝鮮への安易な妥協は禁物である。トランプ米大統領が、金氏の軟化を評価した半面、対話に応じるかどうか明言を避けたのは当然だろう。
 
 国際社会は圧力を緩めることなく、今後の動きを注視していかなければならない。
 
 拉致問題を抱える日本はこの機を捉え、米韓両国と連携しながら被害者の救出につなげたい。