トランプ米大統領がティラーソン国務長官を解任した。
 
 かねてから不仲説が伝えられていたとはいえ、突然の更迭には驚いた。
 
 後任に起用されるポンペオ中央情報局(CIA)長官は対北朝鮮、イラン強硬派として知られ、国際協調を重視するティラーソン氏とは正反対の立場にある。
 
 超大国の外交路線に、どんな変化が起きるのか、十分に見極める必要があろう。
 
 トランプ氏は、アフリカを歴訪中だったティラーソン氏の解任を、ツイッターで発表した。常識を疑わせる手法である。大統領が国務長官に屈辱を味わわせて、得るものはあるまい。
 
 それどころか、政権内の不和と混乱を、わざわざ露呈するようなものだ。
 
 トランプ氏が解任の理由として挙げたのは、欧米など6カ国とイランが2015年にまとめたイラン核合意などでの「意見の相違」だった。
 
 当面の外交課題として、5月末までに開催される北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との米朝首脳会談をにらんでいるようだ。
 
 トランプ氏は米朝首脳会談に向けて、「思考プロセスが似ている」と評価するポンペオ氏を軸に、態勢の一新を図る狙いがあるとみられる。
 
 ポンペオ氏はこれまで「外交解決が不可能な場合は、幅広い選択肢を提示する」と述べるなど、軍事的選択肢を排除しない考えを示してきた。
 
 それだけに、トランプ氏は、北朝鮮に強い姿勢で臨むよう期待しているのだろう。
 
 一方、金氏も核・ミサイル開発に関して挑発的な言動を繰り返し、国際社会を手玉に取ってきた。会談でも、虚実織り交ぜた駆け引きを展開する恐れは十分にある。
 
 米国は首脳会談に応じる以上、非核化に向けた成果が求められる。思うような交渉にならなければ米国が態度を硬化させ、北朝鮮情勢が再び緊迫化しかねない。
 
 会談に向けては国務省はもちろん、政権を挙げた入念な準備が欠かせない。
 
 だが、ポンペオ氏が就任するためには、上院の承認が要る。公聴会は4月に開かれる見込みだが、承認が遅れる可能性もある。
 
 国務省では、幹部の辞任や解任が相次いでいるのも懸念材料だ。ユン北朝鮮担当特別代表が辞任し、シャノン次官も辞意を表明した。駐韓国大使も空席が続いている。
 
 外交当局がそんな状態で大丈夫なのだろうか。
 
 しかも、ティラーソン氏は政権の暴走の監視役も務めてきたが、ポンペオ氏にはその役割は期待できそうにない。
 
 次々に高官を追放していくトランプ流の政権運営には、日本政府も戸惑いを隠せないでいる。
 
 安倍晋三首相は4月上旬にも訪米し、トランプ氏と首脳会談を行う。米朝会談に向けて、安全保障や拉致問題に関する日本の立場もいま一度、訴えておくことが大事だ。