「あるものはあり、ないものはない」。当たり前のようではあるが、ギリシャの哲学者パルメニデスの言葉だと言えばどうだろう。事実、彼は「ある」「ない」を手掛かりに深遠な哲学を説いた

学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の決裁文書改ざんを巡り、佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が行われた。従前の予想通り「刑事訴追の恐れ」を盾に、証言拒否が繰り返され、真相には迫れずじまい

不正が「ある」「ない」でこの1年余り、政治は揺れ続けた。火が消えかかると「ある」という薪(まき)が見つかり、再燃する。事は国有地の売却が適正だったかどうかである。哲学論争ほどややこしくはないはずだが、事実を取り繕う試みが事態を複雑にしている。決裁文書改ざんは、その最たるものだ

森友問題の国会での議論がどんどん大きくなり、必死に走った、と佐川氏は言う。幾分、同情の余地はあるけれど、やめてなお有能な官僚の証人喚問が不発に終わり、もやもやは募るばかり

「あるものはあり、ないものはない」と、ここに至っても明快にできない政権の責任は重い。他の関係者の喚問を求める声も高まろう

北朝鮮は動き、米国は貿易戦争まがいの攻勢に出ている。いつまでも森友に関わっている余裕はない。いいかげんに、すっきりさせてもらいたい、と思う。