北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が中国を電撃訪問し、習近平国家主席と会談した。

金氏にとっては最高指導者に就任した後、初めての外遊である。

4~5月の南北、米朝首脳会談を控え、中朝両国は冷え込んだ関係を修復する必要があったのだろう。

それぞれ抱える事情や思惑は異なるものの、関係改善が東アジアの平和と安定につながるのなら歓迎できる。

大切なのは、北朝鮮の非核化を確かなものにすることだ。中国は具体的な進展が見られるまで、北朝鮮への経済制裁を緩めてはならない。

中国メディアによると、金氏は会談で「朝鮮半島の非核化実現に尽力する」と意欲を表明し、習氏も「非核化の目標を堅持している」と述べた。互いに夫人を伴い、友好ムードを演出した形だ。

中朝は朝鮮戦争(1950~53年)以来、「血盟」と呼ばれる緊密な関係を築いてきたが、最近は、金氏が核・ミサイル開発に固執したことなどで関係が悪化していた。

金氏が訪中した背景には、トランプ米大統領との会談を前に、中国を味方に付けて発言力を高めたいとの思惑があるとみられる。

トランプ氏は外交解決を重視したティラーソン国務長官を解任し、北朝鮮に厳しいポンペオ中央情報局(CIA)長官を抜てきするなど、妥協しない姿勢を示している。

中国を後ろ盾にすれば、米国と対等に近い立場で臨めるとの狙いだ。

国際社会からの厳格な経済制裁で苦境にある中、食糧支援や投資など大規模な経済協力を、中国から引き出す目的もありそうだ。

中国にとっては、隣接する朝鮮半島の情勢は自国の利益に直接関わる問題である。南北、米朝の接近により、置き去りにされるという焦りを抱いたのは間違いない。

習氏は、米韓首脳より先に金氏に会うことでメンツを保ち、北朝鮮問題に対する主導権も取り戻せると考えたのではないか。

北朝鮮への影響力を回復できれば、通商面で攻勢を強める米国に対抗するカードにもなる。そんな計算も働いたのだろう。

懸念されるのは、米朝会談が不調に終わった場合、中国との関係を修復した金氏が、再び核開発にかじを切ることである。

北朝鮮はこれまで何度も非核化を約束しながら、期待を裏切ってきた。そうさせないためにも、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」を求める日米韓と共に、中国は包囲網を堅持する必要がある。

北朝鮮の矢継ぎ早の外交攻勢に対し、日本は蚊帳の外にいるようにみえる。

圧力強化は重要だが、同時に、柔軟な戦略も欠かせない。日本人拉致問題を解決する好機でもある。政府は日朝首脳会談も模索しているが、対話の糸口を見いださなければならない。