日本年金機構は受給者をあまりに軽視していないか。そう批判されても仕方がない不祥事である。

約140万人に年金の過少支給が発生し、データ入力を請け負った会社では、ずさんな処理があらわになった。

なぜ、問題は起きたのか。機構が昨年夏、受給者に送った所得税控除の「扶養親族等申告書」に端を発している。

控除対象者は毎年、申告書を提出する必要があるが、税制改正やマイナンバー制度の導入によって、今回から様式を大きく変えた。このため、昨年12月の期限までに提出しなかった人が相次いだ。

  申告書の手引は、A4用紙8枚に細かい文字で書かれていたという。高齢者らへの配慮を欠いたものであり、受給者の未提出や記入ミスを招いたのも当然だろう。

機構は「受給者の目線で作成するべきだった」としているが、事態を重く受け止めなければならない。未提出の人たちに対して、分かりやすくした申告書を来月、再送するという。丁寧な対応が求められる。

問題は、年金のデータ入力を委託した会社にもある。約140万人のうち、約10万4千人はこの会社の入力ミスが原因だった。

同社はこれまで、機構の業務で32件の受注実績があるものの、落札額は数十万~数百万円だった。約1億8千万円に上るような今回の大規模な作業は初めてだったという。

しかし、同社は計画より大幅に少ない人員で業務に当たっており、納入遅れも起きていた。にもかかわらず、機構の担当部門が全体状況を把握せずに放置していたことは見過ごせない。

さらに、1月には中国の業者への再委託という契約違反が分かったのに、代わりの業者が見つからず、2月中旬まで委託を継続していた。

機構の監督責任が厳しく問われよう。襟を正さなければならない。

機構は委託した会社に対して、損害賠償を請求するという。外部委託の在り方について、加藤勝信厚生労働相は、機構内に来月に設置する予定の外部専門家による調査組織で議論する考えを示した。管理、監督体制をしっかりと見直す必要がある。

機構を巡っては、2015年にサイバー攻撃を受けて約125万件の個人情報が流出した経緯がある。17年には、元公務員の妻ら約10万人に総額598億円の支給漏れが発覚するなど、信頼を揺るがす事態が起きた。

旧社会保険庁時代、有名人の記録のぞき見や「消えた年金」などの不祥事が相次いだのは記憶に新しい。機構は、その後継組織として10年に発足したが、危機管理や情報セキュリティー対策はまだ不十分だ。

言うまでもなく、受給者が機構に託しているのは、老後の安心である。それに応える組織に変えていかなければならない。