終末期医療の治療方針に関する決定手順を定めた国の指針が、2007年の策定以来初めて改定された。

 最大の特徴は、改定前の指針が対象としていた病院など医療機関だけでなく、患者の自宅や介護施設でのみとりにも対応できるよう、「医療とケア」双方の観点から手続き内容を見直したことだ。

 背景にあるのは、目前に迫る超高齢社会の到来だろう。

 団塊の世代が全員75歳以上になる7年後の25年には、日本の総人口の3人に1人が65歳以上となり、年間死者数も150万人を超えると予測されている。

 当然ながら、医療機関だけで超高齢、多死社会に対応するのは難しい。政府は、新たな指針の普及浸透に全力を挙げるとともに、患者一人一人の尊厳を守る終末期医療の態勢を、しっかりと構築していかなければならない。

 新指針では、患者がどのような治療や療養場所を望むかを聞き取る際、担当の医師や看護師だけでなく、在宅医療の現場で活動するケアマネジャーや介護福祉士らも加わるよう明記した。

 肝心なのは、医療と介護の専門職が患者の希望を丁寧にくみ取り、決定した治療方針について患者の家族らと共有することだ。

 そうした一連の手続きが、終末期医療の現場で当たり前のものになるかどうか。とりわけ医療関係者の意識改革が問われよう。

 新指針はさらに、患者が信頼を寄せる「親しい友人」も治療方針を協議する場に参加できるよう改めた。1人暮らしの高齢者が今後急増していくのを踏まえた対応策であり、妥当な措置といえる。

 一方、時間の経過や病状の変化に伴い、延命治療などに対する患者の気持ちは変わり得る。医療と介護の関係者は患者との話し合いを繰り返し行いながら、患者が望めば治療方針を柔軟に変更していく必要がある。

 そうしたきめ細かな対応ができてこそ、誰もが納得のいく終末期医療の態勢が整うはずだ。国や自治体も、患者が自分らしい最期を迎えられるよう、地域全体で支える環境づくりを進めてほしい。

 最大の課題は、患者が自宅や介護施設で最期を迎えたいと望んでも、医療と介護の現場が超高齢社会に対応できていないことである。

 内閣府の調査では、国民の半数以上が自宅で最期を迎えたいと考えているのに対し、実際は4人に3人が病院や診療所で亡くなっている。在宅でのみとりに取り組んでいる医療機関も、全体の5%程度しかないのが実情だ。

 新指針を真に機能させるには、病院に偏っている現在の医療態勢を在宅へと大胆にシフトさせ、患者の思いが最大限かなえられる環境整備が欠かせない。

 その上で、延命治療の中止を認める制度など、終末期医療の充実強化につながる法整備も検討すべきである。