世界1、2位の経済大国による貿易摩擦が激化し、憂慮すべき事態になってきた。

 米国が知的財産権の侵害を理由に中国への貿易制裁の対象品目を公表。これに対し、中国も米国からの輸入品への追加関税を発表した。

 報復の応酬は双方の利益にならないばかりか、世界を混乱に陥れることになる。米中は収拾に向けて早急に解決策を探る責務がある。

 米通商代表部(USTR)が公表した中国への制裁措置は、約1300品目に25%の関税を課すというものだ。航空、宇宙、情報通信、産業ロボットなどのハイテク製品を主な標的としており、中国からの年間輸入額の約1割に当たる約500億ドル(約5兆3千億円)に相当する。

 この制裁を予期していたのか、中国は即座に対応。米国からの大豆やトウモロコシ、自動車、航空機など106品目に25%の追加課税を課すとした。米制裁と同規模の約500億ドル相当になる。

 米政府はこれらの品目について5月中旬に公聴会を開いて意見を聴取し、6月に課税の是非を最終判断する方針だ。中国も米国の制裁関税の発動時期を見極めた上で実施日を決定するとしている。

 米国の発動判断まで約2カ月の猶予期間がある。今後、水面下の対話が進められるだろうが、トランプ米大統領はさらなる制裁の検討をUSTRに指示したという。そうなれば中国も黙ってはいまい。

 貿易戦争という最悪の事態も想定される。トランプ大統領には強く自制を促したい。

 米中間の貿易収支は米国側の大幅な赤字となっており、是正は米国にとっての長年の課題だ。このため、トランプ政権は2月、中国メーカーが強い競争力を持つ太陽電池製品などに緊急輸入制限を発動し、3月23日には安全保障上の脅威になっているとして鉄鋼やアルミニウムの輸入制限に踏み切った。

 中国も4月2日、米国産の果物や豚肉に高関税を課す制裁を発動。報復措置が繰り返されることになった。

 ただ、米国が今回の制裁理由としている中国の知的財産権の侵害については、日本や欧州からも改善や取り締まりを求める声があった。

 中国側に非があるにもかかわらず、制裁に賛同する声が上がらないのは、トランプ大統領が保護主義を変えようとしないからだろう。

 11月の中間選挙を見据え、貿易自由化に批判的な工業地帯の白人労働者の支持をつなぎ留める狙いがあるようだが、損失を被るのは自国の消費者や企業である。

 「米国第一」を掲げ、2国間での協議を重視するトランプ大統領の通商政策は日本にとっても脅威だ。

 鉄鋼・アルミの輸入制限の対象に日本も含まれることになった。近く予定されている日米首脳会談では対象からの除外とともに、国際ルールにのっとった自由貿易体制の重要性を訴えてもらいたい。